「バザールでござーる♪」「スコーンスコーン湖池屋スコーン♪」「モルツモルツモルツモルツ♪」「ポリンキーポリンキー♪」など、耳に残るCMの数々。はたまたEテレ発で国民的人気作となった「ピタゴラスイッチ」「だんご3兄弟」など、数々の鮮烈でクリエイティブな仕事を手掛けてきた佐藤雅彦。本書は、そんな佐藤の初の回顧展として昨年6月から11月にかけて横浜美術館で開催された「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」の図録。美術館の展示図録が一般販売されるケースはままあるものの、5万部のベストセラーとなるのは珍しい。
そもそも内容がいささか特殊だ。図録といえば本来、図版が主体のはず。しかし本書は文章だらけ。ほとんど読み物状態だ。展示作品の解説という形を取りながら、佐藤のおよそ70年の人生が自伝的に語り尽くされている。
「本書のための打ち合わせで佐藤さんからうかがったお話が、『物語』のように非常に面白くまとまっていたことと、展示がただ完成形を見せるのではなく、着想からどのような過程を経てその作品ができたかを伝える内容だったこともあり、展示物の写真よりも文章をメインにした図録になりました。展示に動画作品が多いこともあって、静止画では面白さが十分には伝わらないだろうという判断もあったんです。それならいっそ、文章に振り切った方がいいのではないかと」(担当編集者の渡邉麻由さん)
本書で描かれている佐藤の姿勢は一貫している。それが、書名でもある「作り方を作る」というもの。学生時代に教育の道を志すも挫折し、電通に入社。印刷管理部での業務を経験した後、表現に関してほとんど知識がない状態からクリエイティブ局へと異動する。そこで一つひとつ自分なりのルールを発見して、それを適用することで先述のようなメガヒット作の数々を生み出す。そして最終的に、当初志していた教育の道へと辿り着く。その過程は感動的な成長物語でもある。
展示の情報量が多く、その解説本として会場でもよく手に取られたが、全国的にも老若男女問わず幅広い層の読者に響いた。著者のファン層の広さがあらためて裏付けられた形。とりわけクリエイティブな活動に従事している人たちからの反響が大きいのだという。
