イラン攻撃後、欧州各国の首脳は慎重な声明を出した。一見するとアメリカに迎合しているようにも映るその態度の裏に、したたかなEUの連帯戦略があるとフランス在住50年のジャーナリスト・広岡裕児氏は指摘する。(全2回の2回目/はじめから読む

【レバノンは「第二のガザ」になる可能性がある】日本人が知らない欧州での「イラン攻撃」報道|核弾頭の保有数を増やすフランスの狙い|EUはイスラエルを批判できない|EUも原発回帰へ向かう?【広岡裕児】

(初出:「文藝春秋PLUS」2026年3月17日配信)

「彼に逆らうと何をされるか分からない」

 イラン攻撃直後の欧州首脳の反応について、広岡氏の見方は明快だった。

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「今はトランプ氏という人物がいるため、彼に逆らうと何をされるか分かりません。国際法などの歯止めは期待できないからです」

 各国首脳が柔らかい言い回しに終始するのは、自国経済への打撃を避けるための自己防衛だと広岡氏は説明する。

 一方でスペインの首相のように、はっきりと厳しい批判を口にするリーダーもいた。これが可能なのはEUという枠組みがあるからだと広岡氏は語る。

「トランプ氏が『スペインとは付き合わない』と言えば、即座にフランスなどが『それは許されない』と連帯します。これこそがEUの強みだと思います」

EUの首脳間で役割分担を協議

 広岡氏は、EU首脳間で対トランプの発言が事前に調整されていると明かした。ウクライナ問題でゼレンスキー大統領がワシントンを訪問した際、欧州首脳たちは午前中にウクライナ大使館に集まり、トランプとの会談に向けて各自の役割を決めたという。

広岡裕児氏

「トランプ氏とは長く話しても仕方がないので、一人一言ずつと役割を決め、『メローニ首相、あなたはこのように。マクロン大統領、あなたはこのように』と事前に調整しているのです」

 広岡氏は「おそらく今も同様の連携が取られているはずです」と述べた。

 つまり、ドイツはこの立場、フランスはこの発言という分担が、EUの首脳間でコンセンサスを得た上で行われているということだ。表面上の温度差をもって「ヨーロッパは分裂している」と見るのは誤りだと広岡氏は警告する。