アメリカの「核の傘」はもはや存在しない
欧州の安全保障環境も根本的に変化している。マクロン大統領が核弾頭の保有数増加を明言した背景について、広岡氏は「もはや不信感というレベルではなく、トランプ政権下のアメリカは全く当てにならない存在になったのです」と断言する。アメリカがロシアと接近し、EUを弱体化させようとする動きの中で、「アメリカの『核の傘』は失われてしまった」のだ。
核の傘を担えるのは英仏しかいない。核軍縮条約も失効し、中国も核増強を進める中、「『これ以上、核は製造しない』と表明すること自体が、核の傘としての抑止力を弱めるのではないか」という思惑もあるという。
EUなしでは存続できない、という共通認識
ではEUは一枚岩なのか。ハンガリーのオルバン首相やスロバキアのフィツォ首相など異論を唱える指導者はいるが、「彼らとて、EUを崩壊させたり、離脱したりすることはありません」と広岡氏は断言する。
「弱肉強食の国際社会では、団結しなければ生き残れません。EUなしではやっていけない、というのが加盟国すべての共通認識なのです」
さらにEUは対トランプ戦略として、公共発注で「メイドインヨーロッパ」を優先する法整備を進めており、その枠組みに日本やカナダ、イギリスも含める構想があるという。「『米ロ枢軸』とは異なる新たな国際秩序を構築しようとしている」と広岡氏は語った。GAFAへの規制もその一環であり、アメリカは猛反発しているという。欧州は静かに、しかし着実に、自らの生存戦略を組み立てている。
