火災が発生して7分が経過した22時35分ごろ、同店には客57人、ホステス78人、従業員35人、バンドマン10人、ダンサー1人の合計181人がおり賑わいをみせていた。火災報知器は作動せず、また火災発生の連絡もなかったため事態に気づく者はいなかった。
最初に異変を感じたのは22時36分。従業員の1人がサロン専用のエレベーターで地下1階から7階へ昇っていた途中、エレベーター下部の隙間から白い煙が流れ込んでくるのを目撃する。また、客の1人がトイレに行こうとしてホール出入り口を見たとき、エレベータードアの隙間から煙が噴出していることに気づき、ホステスの1人も出入り口方面から白煙がホール内に入り込んでくるのを見た。
しかし、この時点でデパート内で火災が発生しているとは誰も想像だにしていない。サロン事務所前に設置された換気ダクトの吸入口からも煙が吹き出していたが、従業員らはダクトの内部が延焼しているのだろうと吸入口にバケツで水をかけるなどの消火活動に留まっていた。
また、店のボーイたちはエレベーターから噴出する煙を機器の故障と考え、エレベーター自体を停止させようとしていた。
最後の望みが絶たれた
煙はどんどん量を増していく。それでも店側は緊急事態と考えなかった。というのも、以前にサロンに通じる地下1階のエレベーターのロビーで火が出たことがあり、ボヤ程度で済んだからだ。今回も同程度のものだろう。店長も煙が少し入り店内が暗くなったことが気にはなったものの、大事にはならないと考え避難誘導は行わなかった。それどころか、危険を察知して帰ろうとした客に従業員は「出て行くなら、金を払っていけ」と余裕の言葉を口にしていたそうだ。
このころ、デパート1階南側のサロン入場口の周辺には、客を送迎するホステスが9人待機していた。その中の1人が外の異常な騒ぎに何気なくビルを見上げ、3階の窓から噴出する黒煙を目の当たりにする。彼女は急いで1階に設置されていたインターホンで店に火災発生の事実を知らせようとした。が、呼び出しに応答する者は誰もいない。これで最後の望みが絶たれた。
