絶対にやらなかった「既得権益者の優遇」

アスクルのビジネスモデルも、卸業者さんや小売店さんを介さずに、直接お客様に商品を配送するというものですから、卸業者さんや小売店さんの反発にあうことが予想されました。

そこで行きついたのが、先ほども触れたエージェント制度です。

エージェント制度は、お客様の開拓や与信・回収のコストを抑えるための制度であると同時に、卸業者さんや小売店さんとの共存共栄のための制度でもあります。

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既得権益者と真(ま)っ向(こ)うから対決するのではなく、妥協して事業をあきらめるのでもなく、仲間になることを考えたのです。

ただし、エージェント契約をするに当たって、既得権に配慮して条件を優遇するようなことはしませんでした。

たとえば商圏についても、「長くこのエリアで営業してきたので、このエリアは自分たちだけの営業エリアにしてほしい」といわれても、認めませんでした。どのエージェントさんと契約するかはお客様が決めるというルールにしました。

手数料率や支払いサイトも、規模が大きいエージェントさんだから優遇するといったことはせず、すべてのエージェントさんを同じ条件にしました。

すべてのパートナーは対等であるべき

さらに、アスクルへの注文に必要なカタログは無料で配らず、エージェントさんと制作費を折半したのですが、これについても、特定のエージェントさんに便宜を図ることはしませんでした。

なぜすべて一律にしたかといえば、誰かを特別扱いすれば、それが新たな既得権益となって、他のエージェントさんに必ず不満が生まれるからです。既得権益がなく、新たにアスクルのエージェントとして頑張ろうとしている人たちのやる気を削(そ)ぐことになります。

私は、「すべてのパートナーは対等であるべき」という「イコールパートナー」の考え方を持っています。それを貫き通すことが大切だと考えたのです。

イコールパートナーの方針をチャンスと捉える、チャレンジ精神とやる気のある会社も、どんどんあらわれました。そうしたエージェントさんが営業努力をすることで、大きな売上をあげる事例が次々と出てきました。文具店だけでなく、家具店や食品問屋など、異業種から参入したエージェントさんも好調な売上を見せるようになりました。