絶対に穴を開けてはいけないドライスーツ

――水温も相当低いのではないですか。

田中 水温は3度とか、ほぼ0度に近いですね。ただ、外の気温がマイナス20度だとしても、渓谷の中は閉じた空間で、一番下に流れている0度の水に空気が温められるので、渓谷内の気温は大して下がらないんです。

 もちろん普通の服なら凍死しますけど、僕らはドライスーツを着ていきます。ドライスーツはウエットスーツと違って、手首や首に密着するゴムがついていて、中に水が一切入らないようになっているカッパのようなものです。

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 ただ、中にフリースを着て防寒してはいるものの、もし岩に引っ掛けてちっちゃな穴でも開いたら、0度の水が中に入ってきて命に関わります。だから絶対に穴を開けないように慎重に進まないといけません。

人類未踏の地に降り立った

石灰岩の強アルカリで手の皮膚がボロボロに…

――セティ・ゴルジュでは手の皮膚がボロボロになったとお聞きしました。

田中 セティ・ゴルジュの岩は石灰岩です。石灰岩って、コンクリートと一緒で強アルカリ性なんです。僕らは岩を触る指先の感覚を残しておきたかったので、グローブの指先だけを切って露出させていました。

 指先の血行さえ保たれていれば凍傷にはならない。でも、終わった後になって手がアルカリでボロボロに荒れてしまって、治るのに3週間はかかりました。自然の渓谷でそこまで強いアルカリになるとは思っていなかったので驚きました。

写真提供=田中彰さん

次の記事に続く 「これを見られたなら、死んでええわ」ヒマラヤ奥地の秘境“悪魔の谷”で見た“地上では見られない景色”…なぜ世界的渓谷探検家(53)は命がけの探検を続けるのか?

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