近年、緊張と対立が続く日中関係。なかでも戦後80年を迎えた昨年は、中国側で対日歴史問題に関係したイベントやエンタメ作品の公開が相次いだ。なかでも有名なのが、昨年9月18日に封切られた抗日映画『731』だ。旧日本陸軍による非人道的な人体実験をテーマとした歴史大作ゆえに前評判は高く、公開初日の興行成績は3億元(約60億円)を突破した。

731部隊をテーマにしたシリアスな歴史映画……、のように見える同作の広告ポスター (中国のウェブより)

 ところが同作は、その後の興行成績が伸び悩む。中国の映画レビューサイト『豆瓣(ドウバン)』の評価は荒れ、しばらく経つと「星」の数が非表示に。不評の主な理由は、シリアスな歴史問題と作品全体のトーンの不一致だった模様だ。同作は監督の熱意とこだわりが随所に見られる大作だったが、その熱量が多少、空回りしていたのである。

 たとえば、作中では大日本帝国陸軍の施設内で謎の花魁道中が始まる。さらに日本軍人がふんどし姿で山笠祭りを始める。加えて中国人女優が演じる日本軍の女性士官・今村佳代が「ブコロスゾー」と叫びながら日本刀を振り回し、ハチマキ姿で半裸の日本軍人が屋外の生体実験場で万歳をする……と、個性的なシーンが山盛りだった。

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現場は熱気にあふれていたが…

 超解釈と超展開が連続する、スリラー・サスペンス大作『731』。だが、ライバル作品の『南京写真館』が非常にシリアスな作風だったことも災いして、『731』の尖りすぎた演出は中国の観客に受け入れられなかったのである。

 もっとも、本作は期待の作品だったのは事実であり、制作当時の現場は熱気に溢れていたという。そして、日本人の俳優も数多く出演している。この度、実際に出演した俳優の小野(たつみ)氏(25)に話を聞くことができた。大作抗日映画の舞台裏は、若き日本人俳優の目にはどう映ったのか。インタビューをお送りしたい。