なぜ抗日映画に出演したのか?

──まず、作中で実際演じられたのは日本人の少年兵の吉川です。どのような役回りだったのか、ご説明いただいていいですか?

小野巽さん(以下、小野) 日本から徴兵されて、満洲に行くことになった少年兵です。日本にいる親を養いたいという思いがある人。でも、満洲の731部隊の基地で日本軍がやっていることを目の当たりにして、精神的に病んでいく。そういう役ですね。

小野巽さん 撮影=松本輝一/文藝春秋

──小野さんは『沈黙の艦隊』実写版などにも出演されている若手俳優です。どういう経緯で出演が決まったんでしょうか? 731部隊についても、もともとご存知でしたか?

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小野 もちろん知っていましたよ。わりと世界史が好きなんです。出演については事務所の社長が持ってきたオーディション案件ですね。中国には行ったことがなかったですし、海外の映画に出るのも初。なので、好奇心がまさってしまった、という感じでした。

 当時はコロナ禍だったこともあり、日本国内で撮影した動画を向こうに送って判断してもらう形でオーディションがおこなわれました。僕が19歳のときです。その後、現地には10か月ぐらいいました。コロナ禍による隔離期間や撮影の順延もあって、滞在が延びたんです。

現地での小野さん(本人提供)

──実際演じられてみて、現場の雰囲気はいかがでしたか?

小野 雰囲気はよかったです。すごく過ごしやすくしてもらえましたし、日本への悪感情なんかも、現場の人にはまったくなくて、むしろ歓迎ムード。「メシ行くか」とかも、よく誘われました。役作りのために食事を絞っていますと答えたら「日本人は意識が高いなあ」とびっくりされたりして。

──そこは先方に驚かれる部分なんですね。

小野 ええ。あと、雨に打たれるシーンがあって、そのときに温水が使われていたんです。だから僕が「冷水にしてください」と言い出したときは、やっぱりびっくりされました。「風邪ひくよ」と心配されたのですが、むしろ風邪を引くくらいでいいと思ったんです。

撮影=松本輝一/文藝春秋

監督は日本人好きだった?

──現場では仲良くされていたという雰囲気は、なんとなく想像がつきます。謎の花魁道中や山笠祭りの演出を見ても、監督は本当は日本旅行などが好きそうなタイプに見えました。おそらく(作中の解釈は間違っているけれど)日本に親しみがある人が作っているのだろうなあという印象です。

小野 そうですね。「監督は日本が好き」と言ってしまうと、中国国内向けには彼らのご迷惑になるかもしれないので、気を使うのですが。非常に気さくで親切な方でした。演じるにあたっての指示もわかりやすかったですし。