──主演の姜武(ジャンウゥ)さんや、日本軍の女性軍人・今村佳代を演じた馮文娟(フォンウェンジュエン)さんとの交流はありましたか?

小野 ええ。姜武さんは中国では大御所ですが、気さくな方でした。出演シーンの打ち合わせはもちろん、楽屋がわりのキャンピングカーのなかでいっしょにビリヤードをやったり、ちょっとワインを傾けたり。

 馮文娟さんも、役柄の今村佳代は強面の女性軍人なのですが、現地で大人気のパフェとかタピオカとか、食べきれないくらい差し入れしてくれて。すごく素敵な方でした。

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馮文娟さんはタピオカを差し入れてくれた(本人提供)

──女性軍人・今村佳代は、実際に『731』を見た日本人の間ではカルト的人気を博しているキャラです。演者のご本人もかわいいところがおありの方なんですね。よかった。

小野 かわいいというか、おきれいな方でしたよ。パフェを差し入れしてくれる一方で、ご本人はめっちゃジムに通って絞っていて。

最初は抗日映画ではなかった

──『731』の作品自体、本来は『イカゲーム』みたいな脱出サスペンスを構想していたのに、中国国内のいろいろな事情で抗日映画になってしまった……。という話を聞いたことがあります。

小野 そのようです。作品が731部隊を描くと決まってからも、当初は監督が日中関係を良くしようという考えを持っていて、オーディション段階の台本もけっこう日本人に感情移入できるような内容だったんです。ただ、現実的にはなかなかそうならなかった。

撮影=松本輝一/文藝春秋

──悲しいですね。現場では「政治」の匂いはあまり感じられなかったですか。

小野 全然感じませんでした。むしろ「日本人、いいね!」みたいな感じで。スタッフさんも日本のアニメとかにも興味を持ってくれていて、楽しかったんですよ。

──ほか、日本の現場との違いは感じましたか?

小野 やっぱり規模感と予算的な大きさですね。向こうならではの、土地を使った規模感というか。撮影は青島(チンタオ)でおこなわれたのですが、巨大なブルーバックの中に実際の列車を入れて撮るとか、壮大な規模でした。エキストラの人数の規模もすごかったですし。雪の満洲を描くシーンでは、スキー場で使うような人工降雪機で雪を降らせていましたよ。

青島の巨大スタジオ(本人提供)

──ゴージャスですね。

小野 はい。監督は、家みたいなでっかいテントのなかにいるんです。内部はモニターが15個くらいあって、総司令室みたいになっていて(笑)。そこで、葉巻をふかしながらトランシーバーで助監督に指示を出す。ちなみに監督から葉巻をもらいました。1本7500円くらいするやつで。