大炎上をどう受け止めたか

──いっぽう、公開後に『731』は大炎上してしまいます。撮影中、そうした予感はありましたか。

小野 いや、全然なかったです。むしろ肌感としてはすごくいいなという感じすらありました。自分が出ているシーンをメインに見ていたせいかもしれません。

──作中の不思議な日本描写も、演じられている時は「こういうもんだ」と思ってなさるわけですか。

ADVERTISEMENT

撮影=松本輝一/文藝春秋

小野 演じていて違和感はなかったんです。こういう映画にするとしたら、リアルをそのまま届けてもただのドキュメンタリーみたいになっちゃうかなと思っていて。

 向こうの方の目から見た描き方なんだな、そういう表現方法が監督さんの色なんだなと感じていました。(トンデモシーンとして炎上してしまった部分は)演出的な部分もあるんじゃないかと思うんです。蜷川実花さんの映画のような世界観で撮っているのかなと、現場では思っていました。

──確かに、個性を出していこうという監督の考えが感じられる映画ではありました。ほか、出演後に印象深い体験はおありだったでしょうか?

小野 中国の『RED』(小紅書。中国でInstagramに相当する人気アプリ)というアプリ経由で、映画を見た中国の人からメッセージが来たんです。「作品はいろいろ叩かれているけれど、あんまり気にしちゃダメだよ」「対日感情が悪くなっちゃう映画だけど、気を悪くしないでね」って。

撮影=松本輝一/文藝春秋

──優しい人がいた。

小野 そうなんです。中国、僕はけっこう印象がいい国なんですが……。

抗日モノが量産される背景

 中国では政治的理由もあって、(カネはあるのに)自由な創作が制限を受けがちだ。結果、本来なら他の作品を作ろうとしていたのに仕方なく、当局から制作をストップされにくい「抗日モノ」路線でいく、という選択肢に踏み切るクリエイターもすくなくない。

 日本のテレビドラマで、事務所やスポンサーの関係で変な俳優が入ったり原作改変が繰り返されたりするのと同じく、各国それぞれにある商業創作上の大人の事情があるのだ。

撮影=松本輝一/文藝春秋

 もっとも、『731』の監督は本作に非常に思い入れがあるらしく、なんとか日本でも見てもらえないかとみずから来日して交渉もしていた模様である。日本側の配給会社は手を挙げなかったのだが、そこで『731』の制作陣は作品にみずから日本語字幕を付け、YouTubeで全編を無料公開するという太っ腹な振る舞いに出ている。

 監督の熱い思いと、撮影現場で育まれた日中両国の友情を感じつつ、世界の平和を願って本作を眺めてみるのも一興ではなかろうか。なお、花魁道中のシーンは何回かある。

次のページ 写真ページはこちら