――当然、大きな混乱も。
もりひ 「なんでこんな痛いことばっかされてるんや」みたいなね。そればっかりでしたね。病名がはっきりしないから、先生も「これをすれば治るよ」といったハッキリしたことを言ってくれない。両親は「じゃあ、どうしたらいいんですか」と問いかけることしかできなくて。
――そうした親御さんの不安は、子供心にダイレクトに伝わってきますよね。
もりひ 自分といるときの普通の顔と病院へ行ったときの顔が明らかに違いますからね。「なんだか、自分に気を遣ってるな」ってのもピンときますし。
だって病院に行くときだけ、好きなもの買ってくれましたからね(笑)。「急に優しいやん、これ」みたいな。帰りも「何でも食べていいよ」とか。
「激痛が来て『再発してるな』と」小学6年生で右の上顎を摘出
――明細胞性歯原性悪性腫瘍だとハッキリするまでは、どのような治療を。
もりひ 小学2年生のときに、腫瘍だと思われたところを摘出する手術をしたんですよ。右の奥歯と歯茎をごっそり取って。骨はまだ全然残っていたんですけど。それで「もしかしたら、これで治ったんじゃないかな」となっていた時期がありました。何年かは。
――手術で奥歯と歯茎を取って、痛みは治まったのですか。
もりひ 治まりました。右の奥歯と歯茎を取って、入れ歯にしましたけど、普通に生活してました。ガムは入れ歯にひっついちゃうからダメなくらいで、なんでも食べられてましたね。ただ、入れ歯で噛むと痛いんですよ。
あと、噛み合わせの問題とかもあって、肩こりと酷い頭痛に苦しめられるようになったんです。テスト勉強したり、緊張したりすると、もう頭が痛くなってたんで、近くの接骨院の先生にずっと診てもらっていて。それがきっかけで鍼灸師を目指すようになったんです。
でも今思えば、がんの痛みもありましたね。顎の周りも痛みましたから。で、6年生でまた激痛が来て「再発してるな」と。
――小学6年生でまた痛みが出てきたと。
もりひ そうなんです。この再発のスピードがえらい早かったらしくて。このままやったら脳に転移するんじゃないかって。口腔外科の先生が一番危惧されていたのがそれやったんで、手術で右の上顎を全部取りましたね。
撮影=杉山秀樹/文藝春秋
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