小学2年生で極めて稀ながんである「明細胞性歯原性悪性腫瘍(めいさいぼうせいしげんせいあくせいしゅよう)」を発症し、15年にわたって闘病を続けているもりひさん(22)。

 症状の進行によって顔面に穴が空いてしまったという彼に、顔の穴によって生じた支障の数々、重粒子線治療の副作用、パートナーへの想いなどについて、話を聞いた。(全5回の4回目/5回目に続く)

もりひさん ©杉山秀樹/文藝春秋

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「歯を磨くのが地獄」「口が開けへんから激痛」

――顔に穴が空いてしまった現在の日常生活で、特に辛いことは何ですか。

もりひ 歯を磨くのが地獄ですよ。あれ、マジで。人生で一番イヤです。まずこの上顎の装置を外さないといけないんですよ。外すのがもう、口が開けへんから激痛なんです。傷口を引っ張らないといけないし。

――その装置は、毎日取り外す必要があるのですね。

もりひ そうなんです。外して、自分で洗って、また入れ直さなあかんのが痛いんですよ。引っかかって。もうそれがストレスで堪らないですね。その痛い作業をしないと1日が始まらないので、それがきついんですよね。

――視力や聴力への影響はありましたか。

もりひ 視力は、重粒子線を当ててた影響で白内障になったんですよ。で、両目を手術しているんです。それでやっと視力1.0まで戻って。

 高校の3年間はほとんど見えてなかったですね。左目なんて、右目を隠したら視力検査の台がどこにあるかさえわからへんぐらい真っ白で。友達にふざけて「これ、白内障じゃね?」とか言ってたら、ほんまに白内障やって。

 

「嗅覚はないですね。鼻はもう焼け死んでるんで」

――耳や鼻はいかがですか。

もりひ 聴覚は全然大丈夫で、嗅覚はないですね。鼻はもう焼け死んでるんで。今は、香水が若干匂うかな、ぐらいです。

 最初、味覚もなかったんですよ。中学校出てからは全然味しいひんようなご飯食べてて。でもだんだん味覚だけ回復してきてって感じですね。

――「治療をすべて投げ出したい」と思うことは。

もりひ ありますよ。毎日思ってます。治療も全部やめて、自由になったろうかなと思いますけど。でも今って、うれしいことに、そんなことがもうできひん状況にあるなと思ってて。

 いろいろな方が僕のことを見てくれてて、応援していただいて。だから大袈裟に言ったら、もう自分だけの命じゃないかもしらんなと思って。