――以前は、“周囲全部が自分の敵”だと思っていたのに。
杉田 受け止め方ですよね。頑なに白杖を持たなかったのも、自分が「一般的な」生活を送れないことを受け入れがたかったからです。でも、持ったほうが人は親切にしてくれるし、生きやすい。「お手伝いしましょうか」と声をかけてくれる人も多く、世の中にはこれだけ親切な人がいるんだということに気づくわけです。
点字のお手紙をいただくようになって、NHKにはそれを訳してくれるところもあるんですが、やっぱり想いは自力で読みたい。そこで点字を習い始めた頃、色々読んでみたくなって、駅のホームドアにある「◯号車◯番ドア」という点字を触っていた時のことです。白杖を持っている人間がホームの際にいるもんだから、危なっかしそうに見えたんでしょうね、「大丈夫ですか?」って何人もの方が声をかけてくる。日頃は特段声をかけなくても、大丈夫かなと見守ってくれている人がたくさんいるということを感じました。
それまで、雑踏では自分以外みんな敵だとか、見えないことで何か笑われるかもしれないと思ってたんですが、気持ちの持ち方ひとつで世の中の見え方は変わる。気持ちを開くことによって、これまで会えなかったような人とも接点が生まれる。点字もそう。障害者手帳も、白杖も、点字も、すべてのものは人と繋がる“入口”になり得る。以前はNHKの名刺で人に会っていましたが、今は白杖で人に会っているんです。
制限があるからこそ、まだまだできることがある
――これからチャレンジしたいことはありますか?
杉田 この間、『Nらじ』の企画でオートバイに乗ったんです。「青木三兄弟」っていうオートバイ・ロードレースライダーレジェンドの三男が、 “どんな人でもバイクに乗せる”というプロジェクトをやっていて。バイクに乗れちゃうと、もう何でもできるんじゃないかという気持ちになりました(笑)。
制限があるからこそ、まだまだできることがあるのでは、と可能性を探るマインドです。入口を自分で閉ざしちゃうのは、もったいないんじゃないかなと今は思える。だけど、なかなか受け入れられない人の気持ちもわかります。かつての自分がそうであったように。
受け入れるって、何かスイッチがあってバチッと受け入れるものでもない。じわじわ、じわじわ自分の中に染みていくものなんですよね。僕だって、今でも受け入れたとは言い切れません。ただ、じっとしてるとダメなんですよ。犬も歩けば棒に当たるで、出かけないと何も起きない。……出かけると、ちゃんとたんこぶもできるけどね(笑)。

