2025年6月14日、「僕の前立腺がんレポート」を連載中に亡くなった長田昭二さん。「一人の人間ががんになって、命を落としていく過程を知ってほしい」と語っていた長田さんの遺志を受け、文藝春秋編集部ではご親族の了承を得て、闘病生活にかかわった方々のインタビューを連載番外編としてお届けします。
今回は、長田さんの元担当編集者で文藝春秋法務部のKとともに、弁護士の藤原大輔さんにお話を聞きました。一周忌の今日、その一部を紹介します。
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事務的な手続きも大変だった
――長田さんの場合、有効な遺言書がなかったために、死後の手続きは大変でした。遺言書の相談を受けていたばかりに、その流れで藤原先生とKが、ご遺族と相談しながら、その手続きを進めていくことになりました。
法務部K 法的に有効ではなかったけれども、押印だけが足りない完成した遺言書があったため、長田さんの生前の遺志ははっきりしている。その贈与の遺志をどうするか、が課題でした。
長田さんの連載を読めば分かるように、ご両親には不利益が生じる話でした。ところが、私が相談したところ、ご両親ともに「長田さんの最後の遺志だから、その通りに叶えてあげたい」というお話をされた。その理解があって、手続きはスムーズに進みました。
藤原 お母様も、長田さんの連載は読まれていたそうですね。いずれにしても、法定相続人のご両親に一度は相続して、それを長田さんの遺言書に従って改めて贈与する形になりました。
――もう一つ、大変だったのが、事務的な手続きでした。長田さんのご両親はともに高齢で、長田さんのマンションに来ることも難しい状況でした。
藤原 具体的には、銀行や証券会社の口座、賃貸マンション、各種サブスクの解約など、お金の絡む事務的な手続きですね。遺言書が有効でなかったために、それらの手続きも、法定相続人である高齢のご両親がやらなくてはいけなくなった。そこで、ご両親に委任状を書いてもらい、弁護士に各種手続きを代理してもらうための手続きをしてもらいました。
――それは全権なんですか? それとも限られた権限なんですか?
藤原 基本的に全権ですね。ご両親からは「全部お任せする」と言われました。遺言書には、次のように書かれていました。
「遺言者(編集部注・長田さん)は、遺言執行者(同・藤原弁護士)に対し、相続財産に含まれる預貯金、有価証券、共済金その他一切の債権の解約、払戻し、動産の処分等のほか、この遺言を執行する上での一切の権限を与える」
長田さんのこの遺志を尊重してお任せします、ということでしたが、弁護士でも、それぞれの書類を取り寄せて、どの銀行にはこの書類、あの共済は戸籍謄本が必要、この保険組合は……と、全部調べなきゃいけない。かなり大変な手続きでした。

