角上魚類には「収益目標」より重視されているものがある
「優先すべきは、効率よりもまず効果です。でも、利益が出なければ会社として続けられない。そこで、商品や売り場に関わらないコストを、できるだけ下げるよう努力しています」(吉田さん)
店内の什器や備品、販促チラシなど、お客さんに直接関わらない「見えないコスト」は、徹底的に下げる。一方で、豊富な品揃えや対面販売の人員・バックヤードなど、お客さんに価値を感じてもらえる部分は、一切省かない方針なのだ。
「これまで経営のトップから、収益に関する目標を言われた記憶はありません。ただただ『お客様に喜んでいただきなさい』と、それだけです」(鶴見さん)
同社には、「店舗運営原則」と呼ばれるものがある。それは、創業時から変わらない「四つのよいか」だ。「鮮度はよいか、値段はよいか、配列はよいか、態度はよいか」——社員は数値目標ではなく、この問いに答えることが求められる。この言葉に、角上魚類の経営哲学が凝縮されている気がした。
破竹の勢いで躍進する同社だが、現状に甘んじることなく、今まさに新たな挑戦を始めている。それは、2025年春から開始した外販事業だ。自社製品の「魚漬け」などをECサイト・大手通販サイトで販売するほか、広島県や和歌山県のGMS・スーパーでも取り扱いが始まっている。
新潟市場の魚を届けるには、鮮度を保つ上で、地理的な制約が避けられない。そこで、自社製品を通じて、より多くの人に届けようというのが次なる戦略だ。「日本海まるごとやってきた」という同社のキャッチコピーは、地域の壁を超え、全国へと広がりを見せている。
「出店して」店舗用地の空きを教えてくれる熱心なファンも
角上魚類には、「家の近くに出店してほしい」というメッセージが、毎日のように届く。なかには、「あの工場が空くから、その跡地はどうか」と具体的な物件情報まで送ってくる一般客もいるそうだ。
「魚離れではなく、売る側がなくなっているだけ」——鶴見さんの言葉が耳に蘇ってくる。消費者が魚を求める気持ちは、決して消えてはいなかった。
圧倒的な品揃え、昔ながらの対面販売、加工を行うバックヤードの人員——。一般的なスーパーが「非合理的」と判断し、手放してきたものを、角上魚類は丸ごと「強み」に変えてきた。効率を追い求める時代に、その逆を走り続けてきた鮮魚店は、今や唯一無二の存在感を放っている。
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