豊島区の雑司ヶ谷は不思議なまちだ。JR山手線の内側にあるのに、都会らしくない。もっと言えば、懐かしい田舎のような雰囲気がある。なぜかホッとするのだ。どうしてなのか。これにも消えた弦巻川が関係している。(全3回の3回目/最初から読む

都電荒川線を渡る弦巻通り。下水道はこの下を流れているが、地名の元である弦巻川の流路は少し左側にあった(豊島区)

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鬼子母神(きしもじん)様が結界を張って守ってくれているのではないかと思うことがあるんですよ」

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楽しい会話で客を癒やす赤丸末千江さん。手前の招き猫は常連の中国人留学生が豪徳寺で買ってきた。あまりの嬉しさにレジ横の最も目立つ場所に飾っている(豊島区、赤丸ベーカリー)

 赤丸末千江(まちえ)さん(54)が言う。雑司ヶ谷を貫く区道「弦巻通り」沿いにある「赤丸ベーカリー」。兄の赤丸尋智(ひろとし)さん(65)がパンを焼き、妹の末千江さんが接客販売をしている。パンの美味しさもさることながら、末千江さんの軽妙なトークが魅力の一つだ。「夕暮れは雑司ヶ谷の人通りが減りますよね」という話になった時、末千江さんが半分真顔で結界の話をし始めたのだ。「夜はすごく静かで、猫の足音が聞こえるぐらいです」。いたずらっぽく笑う。

まるで異空間のような東京のエアポケット

 尋智さんも「北は雑司ヶ谷霊園。西は法明寺、鬼子母神、東京音楽大。南は日本女子大。東は護国寺。ブロックされて、まるでエアポケットのような空間です。池袋の雑踏から帰って来ても、法明寺の細い通りを抜けると、雰囲気が一気に変わって異空間に入ります」と語る。

弦巻通りから都道に出る。ガラリと雰囲気が変わる

 不便かというとそうではない。極めて便利だ。池袋駅や地下鉄の護国寺駅に隣接していて、JR目白駅も近い。そもそも雑司ヶ谷には地下鉄の「雑司が谷駅」があり、都電荒川線の停留所は「鬼子母神前」「都電雑司ヶ谷」と二つもある。