「何かを犠牲にしないといけない」
当時はまだ韓国語を勉強中の段階で、自分の気持ちや考えを、うまく言葉で表現することができなかった点も背景にあるだろう。後にヨシはこう語っていた。
「でも、なりたい自分になるためには、何かを犠牲にしないといけない」
その言葉通り、彼は練習の合間を縫って韓国語の勉強に没頭、ラップの技術とともに言語能力も磨き続けた。
落選を経て掴んだデビュー
サバイバル番組の終盤で、運命のデビューメンバー決定が行われた。番組を通じてデビューするメンバーは「TREASURE」として発表されたが、ヨシの名前はそこになかった。彼は次点グループ「MAGNUM」のメンバーとしてデビューの機会を待つこととなった。
しかし、この計画は急展開を迎える。諸般の事情を経て、両グループが統合され「TREASURE」として共にデビューすることとなったのだ。
韓国の高卒認定試験に合格
しかし彼の挑戦はそこで終わらなかった。デビューが決まったあとも、韓国の高校卒業学力検定試験(検定考試)の合格を目指して勉強を続け、2020年に見事合格している。
「ルーツがあれば、簡単に言語を習得できる」というのは大きな誤解であろう。3世以降、4世ともなれば条件は一般学習者とほぼ同等と言っていいと、筆者は考えている。もし周りに韓国語の上手な在日3世や4世がいたとしたら、それはヨシのように必死の努力と勉強を重ねた結果なのだ。
「自分のラップで、誰かの背中を押したい」
ヨシのグループでの役割は、ラップラインの要を担うリードラッパー。彼の真骨頂は柔和なルックスとのギャップが際立つ、エッジの効いた発声とキレ味鋭いフローにある。さらに、彼はクリエイティブ面でも本領を発揮。レコーディング中に歌詞の修正を余儀なくされても、すぐにブラッシュアップ案を出せることでも知られている。
「歌手として、自分の書いた歌詞・ラップで、聞いてくれる人たちに力を与えられるようになりたい」
「僕がおじいさんになっても愛され続ける曲を」
こうした言葉から垣間見える、音楽に対するストイックなまでの誠実さと、温かい人間性。事務所の社屋に自分専用の作業部屋を持ち、時間を忘れるほど作詞・作曲に没頭する日々を送っているという。




