それが終わり、『もうすぐ帰国だな』というゆったりした雰囲気の中、宿舎に戻っていった。すると、向こうから『おー!』という声が聞こえた。隣の小林さんが『叫んでいるけど、何だろうな』と反応していた。よく分からないまま少し早足で向かうと、今度ははっきりとした声で『シーラカンスが獲れたぞ!』と聞こえたんです。

みな『えっ!』と驚いて、駆け足になった。たどり着いて宿舎の2階に上がった。広間には、現地のコモロ人やフランス人がいっぱいいた。『どうしたんだ?』と聞くと、『シーラカンスが獲れたんだ!』と」

魚のどでかいのというより、怪物

堀田さんの口調が熱を帯び、ベテランカメラマンならではの描写が始まった。

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「前を覗くと、まさにそれが、どーんとあった。魚のどでかいのというより、怪物と言ったらおかしいけど、そんなほうが近い。そして、オーラがぶわーっと立ち上がっていた。シーラカンスから天井にかけてね。そこにいる人たちも呆然としていた。

事態が呑み込めてきた頃、鈴木さんらが採血を始めた。帰る直前だからフィルムはほとんどなくなっていたけど、こういう時のためにスクーピックを持っていた。

スクーピックには3分ほど撮影できる100フィートのフィルムを使うのだけど、これが10本分あった。それが良かった。そのうち1本を準備し、カメラを構えた。そして、こう鈴木さんに声をかけたんだ。

『とにかくこれを克明に撮る。頭の先からお尻の先まで克明に撮る。そのためには、どういうところをどういう風に見せたいんだ。言ってくれ』」

気概が込められた言葉

まさに怒濤の語り。それまでは、「です・ます調」で話をしていたのが、「だ・である調」に一変した。体温が1、2度上がった感じだ。口からぽんぽん言葉が出てくる。

そして最後に出てきた「克明に撮る」の「克明」という言葉の選択が味わい深い。まさに、そのように撮ろうとする、堀田さんの気概が込められている。

「僕は撮り始めた。まずは目。エメラルドグリーンなんだよ、綺麗な。鈴木さんに『この綺麗な目がどう動くか、触って動かしたらどうですか』と声をかけた。次に彼が胸ビレ、背ビレ、尾ビレなどを一つずつ観察するのを克明に撮った。