どんな食べ物でも言い訳はできない

 10kgを超える胃袋を持ちながら、これほどの戦略家。白田と同じほどの大食漢であっても、その戦略の前に敗れ去ったフードファイターもいたことだろう。

「実力はすごいあるんだけど、経験不足でポテンシャルを発揮できない選手もいますからね。試合が終わってから、もっと食べられたとか、この食材じゃなかったら食べられたとか言っていたり。

 でもそんなことを言っても何にもならない。今後に生かして、もっと食べられるようにするにはどうするかを考えていかないとね」

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 フードバトルで食べる料理には、熱いものもあるし冷たいものもある。甘いものも、辛いものもある。好き嫌いはもちろん何の言い訳にもならない。猫舌だから熱い料理は食べられない、などというのも、勝負の前ではまったく無意味。それが、フードバトルの世界だ。

 白田も、もちろん熱かろうが冷たかろうが辛かろうが、それぞれの料理に合わせた工夫をしながら、当たり前のように食べ進めていった。

「変な言い方をすると、粘膜が火傷で炎症反応を起こす温度って一緒じゃないですか。だから、熱くてどうのなんてことは考えたこともありません。熱いラーメンだったら、先にちょっと水分を口の中に含んでおけば、なんとでもなります。

 辛いものもガマンするだけです。辛さは痛みですけど、実際に傷ついて痛いわけじゃない。やせ我慢かもしれないですけど、そう思えばいけるものです(笑)」

 

 実は最も難しいのは、冷たい食べ物だとか。冷たいものを大量に食べ続けると、内臓が冷えてしまい、体の震えが止まらなくなるのだ。深部体温の低下というヤツで、放っておくと低体温症にもなりかねない。

 対策は、暖かい飲み物を飲むこと。食べる途中に温泉に入って体を温めていた女性もいたという。

相手のペースを乱すための駆け引きも

 ペース配分も、勝負の決め手。決勝戦のようなトップクラス同士の試合になると、胃の容量はほとんど五分と五分になる。そうなると、ペース配分や食べ方といった戦略が勝負を分けることになるのだ。

 白田にとって引退前最後の大会も、まさにそうした戦いだった。

「そのときは正直ちょっと調整不足で、胃の容量からしたらヘタしたら負けてるくらいのコンディションだったんです。だから、決勝ではあえてスタートから10分くらいめちゃくちゃオーバーペースで行きました。

 前半でリードされると、相手が焦るわけですよ。差が付きすぎると、埋めるのは結構大変ですから。

 でも、焦ると飲む水の量とかが増える。余計なものを入れさせて、相手のペースを乱していくんです」

 結果、制限時間が迫ってからも淡々と食べ続けた白田に対し、ライバルは焦った分のツケが回ってペースが落ちてゆく。胃の量がトントンならば、水やスープといった余分なものをどれだけ胃に入れたかどうかで勝敗が分かれる。

 だからこそ、いかに自分のペースで戦いを進めるかがカギになるというわけだ。