イラン攻撃をはじめ、トランプ米大統領の行動に国際社会が振り回されている。混迷する国際情勢の中で、日本外交の基軸・日米同盟も大きな岐路に立つ。就任から半年が経つ今、高市早苗首相の外交をどう評価すべきなのか。そして、これから日本外交はどこに向かうべきなのか。安倍政権下で設置された安保法制懇談会の有識者委員で、国際政治が専門の京都大学大学院教授の中西寛氏に聞いた。

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日本人の「没落感覚」と高市人気

 この危機の時代に日本外交のかじ取りを担うことになったのが、高市早苗首相です。

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 昨年10月に誕生した政権は、就任直後の世論調査で82%という驚異的な内閣支持率を記録し、半年経った今なお高い支持率を維持しています。この“サナエブーム”については私自身、十分把握しかねています。しかし、その背景には、日本人の意識が急速に変化していることがあるように思います。

外交方針が問われる高市早苗首相 Ⓒ時事通信社

 その変化は、少しずつ顕在化していました。たとえば、ウクライナ戦争以降、当時の岸田文雄首相が繰り返し述べた「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」というフレーズに日本人が共感し、すんなりと受け入れた。その結果、ロシアに対する強い外交姿勢やNATO諸国との協力強化も大きな反対なしに決まっていきました。その後、防衛費をGDP比で2%に増額するという、それまでなら世論や国会で大反対されたであろう決定も、大きな反発を招くことはありませんでした。

京大大学院教授で国際政治学者の中西寛氏 Ⓒ文藝春秋

 私は、それだけ国民の間で、日本という国が置かれた状況に対する危機感が高まってきたのだと思います。日本人がある種の「没落感覚」を抱くようになり、将来に恐怖心を抱いている。日本が危機にあるという恐れや実生活が苦しくなっている不満がある中で、救世主となる政治家の出現を待望するようになったのです。

 そこに登場したのが、高市首相でした。憲政史上初の女性首相として、政治の常識を打ち破るような新鮮さに国民は期待し、今なおそれが続いているわけです。