ないものねだりというか「昔がよかった」になっちゃう

――それってけっこうストレスになるもの?

笠原 なりますよ。若い子に言っちゃうじゃん。洗いものとか、切り方とか、こんなことも準備できてないのかとか、自分一人でやってればそんなストレスないじゃん。

――後進を育てるという役割を担っていらっしゃる。

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笠原 立派な料理人にしてあげなきゃ、うちで働きたいってきた子たちをね。焼き鳥屋時代なんかはね、気楽でよかったなって思う。一人で仕入れ行って、今日はこんなメニューにするかって考えてつくってさ、逆にそのときはそのときで疲れるわけですよ。最後の片付けまでぜんぶ自分でやって、そうなるとそうなったで人間さ、もう一人いたら楽だなって思うわけでしょ。人間はないものねだりというか、スタッフがいっぱいいたほうがもっと精度の高い料理をつくれるからって頑張ってやってきて、いまになったら今度は一周まわってさ、昔がよかったとなっちゃうわけ。

 

――こんな最期を迎えたいっていうイメージはありますか。

笠原 最期はやっぱ料理の仕事はしてたいよね。引退して引っ込もうとかそういう気はさらさらないね。それこそフレンチの三國(清三)さんだってさ、70歳過ぎてカウンターの店を始めたじゃん。あれが理想形だよ。体が動くんだったらやりたいじゃないですか。俺なんか趣味もないし、体動かしといたほうがボケないだろうし、世の中の役にも立つし、仕事してるほうが。いろんな人とお話もできるだろうし。

「心ときめく感動がない」という悩み

――いまぽろっと「世の中の役に立つ」とおっしゃったのも、いいなと思いました。笠原さんはまわりからみると華やかに思われるかもしれないですけど、実直なイメージがぽろっと出てくる。

笠原 俺は、華やかだとは思ってないし、やっぱ冷めてんだよ。子どものころから。常にもう一人の自分みたいなのがいて、だからずっとこんな感じだと思いますよ。

――最近、わーやったーうれしいーって感じたことは?

笠原 あー、それくらい心ときめく感動みたいなのがないのもいま悩みだな。

 

――若いときはいっぱいありましたよね。

笠原 あったよ。それこそ焼き鳥屋やってたころの、初めて雑誌にのったとかさ、ああいうときめきとかがいまないのよ。それがいいのかわるいのか。たとえば娘が結婚して可愛い孫でも産んでくれたらそれはうれしいと思いますよ。