地味だけど、いま楽しいと言えるささやかな幸せ

――結婚は喜ばしいけれど結婚されるのは娘さんですもんね。

笠原 ちょっと違うじゃん。やっぱり昔の、自分でがんばってお店が毎日満席になったとかさ、そういうのがほんとに自分の自信にもつながるし。いまは自分がそんなに物欲がないから、高いものは買わないけど、書店に行ってちょっと面白そうな本だなとかさ、それくらいの金は自由になるじゃないですか。それがやっぱりささやかな幸せかなとかね。人にごちそうしてあげられたりとかさ、若い子たちを今度飯でも行くかって誘ったり、友だちの子どもになんか欲しいってもんがあれば買ってあげたりとかさ。

――素敵な生き方ですね。

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笠原 それぐらいじゃない、よろこびというのは。だから俺、推し活してる人がうらやましくて。俺の推し活が池波正太郎先生の本を読むことくらいなんだけど、ほんとそれくらい。何人かの好きな作家さんの本をゆーっくり読む時間と、あと池波先生が通っていた店に食べに行ってみるとかね。

――それも立派な推し活ですよね。ちょっと地味ですけどご自愛してらして。

笠原 地味だけどそれが唯一いま楽しいと言えば楽しいかな。あの店に行けたーとかさ。

 

撮影 志水隆/文藝春秋

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