スーツに対抗する服装

 ジョブズのカジュアルなスタイルは、現代のIT企業では一般的なスタイルとなりました。もちろんIT企業ですべての人がカジュアルな格好をしているわけではないでしょう。

 たとえば、社内でひとりで作業している分にはラフな格好でも問題ありませんが、取引先への訪問やクライアントを社内へ迎えるときにはやはりきちんと見える格好が求められます。IT企業にも服装に関する一定のルールは見られるようですが、こうした企業で働くことの魅力の一つにカジュアルな服装があることも事実です。

 IT企業に関わる人たちに、パーカーなどカジュアルなスタイルが取り入れられたのは、そのような服が楽で仕事がしやすいという実際的なメリットが大きいのかもしれません。また、そういった服を着て仕事をしていてもOK、つまり服装に関する不合理な規則にとらわれない人々が多いのかもしれません。しかしただカジュアルという理由だけで、その服装がこれほど支持を得ることがあるでしょうか。

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スティーブ・ジョブズ ©getty

 IT企業のリーダーたちは、従来の金融業や建設業などのビジネス、とりわけ近しい分野でいうならば大手メーカーとは異なる新しさを示すために、積極的にカジュアルなスタイルを取り入れたのでしょう。ファッションは差別化の手段です。だからこそ、最先端の技術開発に携わるIT企業やベンチャー系企業の人々は、服装においてもカジュアルなスタイルを意欲的に取り入れたのではないでしょうか。

 カジュアルな格好をする人たち。パーカーを着る人たち。その格好は、新しい技術の開発、新しい社会の仕組みの構築にチャレンジする企業であること、パーカーはその先進性を象徴するアイテムとなりました。しかしそのようなスタイルは、旧来の会社組織にいる人々にとっては「ふさわしくない」服装です。だからこそ、「パーカー」は、古い慣習や旧来のビジネスモデルに挑戦する服装となるのです。それは「スーツ」に対抗する服なのです。

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