急激なK-POPの躍進
しかし、ここにきて急激に認知度と人気を広げているのがK-POPだ。映画も、アニメーションではあるがNetflix『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(監督:マギー・カン)が予想をはるかに上回る世界的な大ヒットとなった。韓国の伝統文化と現代のK-POPカルチャーを組み合わせ、ステレオタイプではない韓国の描写を行っている。
その勢いはファッション界にも及び、今年5月のMET Gala*には同作のテーマソング「GOLDEN」を歌って今年初頭のゴールデングローブ賞、グラミー賞、アカデミー賞を席巻した韓国系アメリカ人の歌手・Ejaeが招かれた。Ejaeは全身にスワロフスキーが散りばめられたシルバーのドレスをまとい、朝鮮王朝時代の髪型にインスパイアされたアップドゥで現れ、好評を得た。加えてBLACKPINKもメンバー4人が揃って招待されるという歴史的な快挙もあった。
*MET Gala: ニューヨークにあるメトロポリタン美術館(MET)のコスチューム・インスティテュートが、その運営資金を賄うために毎年5月に行うイベント。著名デザイナーが各界セレブを招待し、セレブはその年のテーマに沿った華やかな衣装を着て出席する。
今年は日系アメリカ人の女子大生メイベル・タナカを主人公としたディズニー&ピクサー『私がビーバーになる時』(監督:ダニエル・チョン)もヒットしている。自然環境を守るためにメイベルがビーバーとなる物語で、特に日本の文化を強調する作品ではなく、アジア系や日系のステレオタイプも登場しない。
なお、メイベルの吹き替えはパイパー・カーダ(韓国系+スコットランド系)、メイベルの祖母グランマ・タナカはカレン・ヒューイ(中国系)が担当。メイベルがビーバーとなって出会う“爬虫類の女王たち”の声はニコール・サクラ(日系+アイルランド系)。
人種マイノリティを起用したハリウッド大作
『プラダを着た悪魔』で主役を演じたアン・ハサウェイは、2018年『オーシャンズ8』に出演している。ジョージ・クルーニー主演の男性たちによる小粋な犯罪ドラマ『オーシャンズ』シリーズの女性版だ。映画自体は非常に楽しく、MET Galaの再現シーンと登場人物が纏うハイ・ファッションも目を引く秀作だ。
主人公デボラ(サンドラ・ブロック)がMET Galaに潜入し、1.5億ドルのダイヤのネックレスを盗む計画を立てる。そのためにデボラは自身も含めて8人の異なる特殊技能を持つ女性を集める。そのうち3人が人種マイノリティ(カリブ海系、インド系、東アジア系)だ。
これは、ニューヨーク市内を舞台とする以上、登場人物に多様性を持たせない限りリアリティが出せず、制作側がその多様性描写に試行錯誤した結果のキャスティングと思われる。たとえば、自身もカリブ海バルバドスからの移民であるリアーナ演じるナインボールという女性は、ドレッドロックス、ラスタカラー、マリファナというカリブ海系(もしくはジャマイカ系)へのステレオタイプ設定だった。ただし、優秀なハッカーという意外性を持たせることもなされていた。

