イエローフェイスは無くなり、アジア系の役を白人に置き換えることは批判される時代となったが、新たな問題も起きている。アジア系と白人のミックスの俳優の起用だ。
この件があらわになったのは、先の『クレイジー・リッチ!』だった。主人公レイチェルの恋人で、マレーシアの大富豪の跡取り息子であるニックは全アジア系女性の憧れの的であるハンサムで洗練された青年だ。
この役を、誰が演じるのか。
のちにマーベル初のアジア系スーパーヒーロー『シャン・チー』(2021)に抜擢された中国系カナダ人の俳優シム・リウは、ニック役に選ばれなかった際の苦しい思いを語っている。
「『何か』が自分には欠けている」
オーディションに落ちた理由が「シムにはXファクター、つまり“それ”が欠けている」であると聞かされたリウは、大きなショックを受けたと言う。Xファクターとは、人や物事を成功に導く、しかし、はっきりと定義できない魅力や資質を指す。リウは「人々が観たくなるような『何か』が自分には欠けていると感じた」と当時を振り返っている。
ニック役を射止めた英国系マレーシア人の俳優ヘンリー・ゴールディングについてリウ自身は語らなかったが、アジア系の映画ファンはゴールディングがアジア系と白人のミックスであることを議論した。
美男美女は「白人ぽく」なければいけないのか
この件は非常に繊細かつ語るのが難しい問題だ。俳優として優れているか否かと、ミックス特有の外見は別問題と言える。しかし、ハリウッド映画における際立った美男美女は、アジア系であっても「白人ぽく」なければならないのか。ニック役を得られなかったシム・リウは「アジア人すぎる」のか。
他方、ヘンリー・ゴールディングは他者から「アジア人らしくない」とも「白人らしくない」とも言われると語っている。
結果的に『クレイジー・リッチ!』におけるゴールディングの存在感と演技は完璧であったため、この議論は立ち消えとなった。
アジア系にもさまざまなルーツがあり、ルーツを共有するグループの中にも多様な世代、個性、ライフスタイルがある。皆が同じでは決してない。同時にアジア系特有の共通項もあり、それによってアメリカ社会からステレオタイプ化されてしまう。
しかし、アジア系もまたアメリカ社会の構成員だ。ハリウッド映画がそれを理解し、バランスの取れたアジア系の描写と配役が行われることを切に望む。

