大学だけではなく、高校もガル高からの転校で留学生を受け入れている。2002年に仙台育英高校に入学したサムエル・ワンジルはすでに触れた通り、卒業後にトヨタ自動車九州に所属すると、2008年の北京五輪のマラソンでケニア人初の金メダルを獲得したスターランナーだ。
後の金メダリストが在籍していたのだから、当時の仙台育英は全国高校駅伝で連覇を果たすほど圧倒的に強かったのだが、実はこの時、ワンジルを含めた男女4人のケニア人留学生ランナーが在籍していた。そして、仙台育英のホームページによると、その全員が「Ngaru Secondary School」からのスポーツ留学生となっている。
陸上ファンが盛り上がった「ガル高校応援スレ」
駅伝で他を圧倒するケニア人ランナーたちの出身校が同じとなれば、陸上ファンがガル高に注目するのも当然だろう。陸上ファンの間では、ガル高はケニアの超エリートスポーツ校に違いないと認識されていった。
ガル高にまつわる情報は陸上ファンたちが面白がるネタとなり、いつしかインターネット上の掲示板にスレッドが立ち上げられた。「ガル高校応援スレ」と名付けられたそのウェブページを覗くと、さまざまな噂が展開されてきた様子がわかる。
「ネットで必死に探してるのにガル高校のHP見つからねぇ。実際にあるのかも疑問に思えてきたw」
「ガル高校が存在しないって妙にリアルだな。記録会で優秀なタイムを出した選手を、ガル高校出身として日本へ送り出す組織がある(もちろん高額な金が絡む)。そしてガル高校の存在を探そうとするヤツは消される……」
「ガル高ばかり日本に来るのはガル高にしか凄い選手がいないのか、ガル高以外はそれほど日本に輸出しないのかどっちか分からんな」
出身校として「消えた」ガル高
しかしこのスレッドは、2012年を最後に更新が止まっている。それは、ちょうどその頃、2010年代前半を境に、突如としてガル高出身の留学生が来日しなくなったからである。
例えば、箱根駅伝に出場したランナーでは、2014年のダンカン・モゼを最後に、以降はガル高から選手が輩出されることはなくなった。今では、東京国際大学のリチャード・エティーリの出身校であるシル高や、現在はホンダに所属するイェゴン・ヴィンセント(東京国際大学卒)のチェビルベレク高、城西大学の4年生ヴィクター・キムタイのマウ高などさまざまだ。
これまでに箱根駅伝を走ったケニア人ランナーは41人いるが、そのうちガル高の出身者は5人。比率としては約1割だが、これは留学生ランナーが増えた近年に、出身校としてガル高が「消えた」からである。


