ゴール直前で日本人選手をケニア人留学生ランナーが追い抜く――。全国高校駅伝では近年、留学生による劇的な逆転劇が繰り返され、そのたびに留学生ランナーの起用について議論が巻き起こってきた。なぜ高校駅伝は、外国人留学生の起用区間を“最短区間のみ”に制限する決断を下したのか。

 第57回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した、ノンフィクションライター・泉秀一氏の著書『アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生』(文春新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージ ©アフロ

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全国高校駅伝の女子大会最終5区でのケニア人留学生による逆転劇

 ケニア人留学生への反発を巻き起こす大きな要因が、ドラマチックなレースによる視覚的な刺激だ。ケニア人ランナーによる逆転劇は観客の感情を刺激し、時に選手たちの起用の規制強化につながってきた。

 全5区間、21.0975キロで行われる全国高校駅伝の女子大会。2018年、最終5区にトップで襷を繋いだのは仙台育英(宮城)で、長野東(長野)、成田(千葉)、豊川(愛知)に続く5番目で、神村学園(鹿児島)のケニア人留学生、カマウ・タビタ・ジェリは走り出した。

 全国の常連校ながら優勝をしたことがなかった神村学園は、初めてケニアからの留学生としてタビタを迎えていた。トップとの差は31秒。

 それまでも接戦で最終5区に襷が渡るケースはあったが、その後に逆転できず、むしろ引き離される形で優勝旗を掲げられずにいた。留学生ランナーを起用すれば、4区終了時に先頭との秒差が離れすぎてさえいなければ、アンカーで逆転のシナリオが描ける。

 それが実現したのが、タビタが3年生になったこの年だった。襷を受け取ると次々に選手を追い抜き、2.7キロ地点で先頭に立った。そこからは後続を引き離していき、最終的には2位に26秒差をつけてゴールテープを切った。

 長らく日本人だけで勝てなかった神村学園はついに全国を制したが、最終5区での留学生による逆転劇は、日本人選手との実力差をあらわにする構図となり、関係者の間で議論を呼んだ。