わずか5キロで1分20秒差の逆転は不可能…アンカーのケニア人ランナーは

 その3年後の2023年大会はさらにドラマチックな展開だった。4区を終わった時点での先頭は仙台育英。2位は立命館宇治で30秒差、3位の神村学園とは1分20秒の大差がついていた。

 トップの仙台育英、2位の立命館宇治が日本人選手を起用していたのに対して、神村学園のアンカーを任されたのはケニア人留学生のカリバ・カロライン(現日本郵政グループ)というランナーだった。

 襷が渡った時点で大半の観戦者たちは、いくら神村学園のアンカーがケニア人ランナーのカロラインだとはいえ、わずか5キロで1分20秒の差を逆転するのは不可能だと思っていた。

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 ところが、カロラインは襷を受け取ってからハイペースを刻み、一気に2位の立命館宇治を追い上げていく。残り2キロ地点で捉えて2位に浮上すると、さらにその先を走る仙台育英を猛追していった。

 しかし、それでも2人のランナーがゴール地点である西京極総合運動公園陸上競技場に入った時点では、まだ80メートルの差があった。さすがに追いつけないかと思われたが、明らかに2人の動きは違っていた。

写真はイメージ ©アフロ

 カロラインはラストスパートで一気に差を縮めて、最後の100メートルの直線に入って逆転した。そのまま2人はゴールになだれ込み、1秒差で神村学園が優勝を手にすることになった。

 このレースでは、仙台育英も2区でケニア人留学生を起用していた。つまり先行逃げ切りの作戦であり、逆に神村学園はエースを最後に残して逆転を狙っていた。いわば戦略の違いである。

 しかし、ゴール手前で日本人選手がケニア人留学生に逆転されたという事実は、戦略を超えて視覚的に衝撃を与えたのである。敗れた仙台育英の選手がゴール後に号泣したことも、より観戦者たちの感情に訴えかけた。

 勝者がいれば敗者も存在する。それが当たり前であるスポーツは、元から残酷な世界である。ところが、留学生に日本人が抜かれたその映像がSNSなどで拡散されると「残酷だ」「かわいそう」といった声が相次いだ。