4人を抜いて先頭を走るケニア人ランナーに追いついたのは…
あるいは2年後の2020年には、やはりアンカーでより衝撃的な逆転劇が起こった。5区にトップで襷を繋いだのは京都の立命館宇治で、以下、2番手の須磨学園(兵庫)、3番手の北九州市立(福岡)、4番手の仙台育英まではいずれも日本人選手がアンカーだった。続いて5位で襷を受け取ったのが神村学園のバイレ・シンシア。ケニアから来た留学生ランナーだ。
このバイレが前の選手たちを追い抜けるのか、というのが実況や解説者たちの注目ポイントだった。バイレは先頭から約20秒差で襷を受け取るとハイペースを刻み、一気に前との距離を詰めていく。わずか1.5キロ地点で先頭に立った。3.5キロを残しながら、これにて勝負アリかというムードが漂った。
しかし、さらに後ろからもう1人のランナーが追走してきた。世羅(広島)のテレシア・ムッソーニ(現ダイソー)だ。トップと42秒差の8位で襷を受け取ったテレシアは、5区の序盤はさすがに先頭まで追いつくことはないだろうと、実況や解説でも言及されることはほとんどなかった。
ところが、バイレよりも速いタイムで駆け抜けてきたテレシアは、2.5キロ地点で6人を抜いて2位に浮上。残るターゲットはすでに4人を抜いて先頭を走る神村学園のバイレだけになり、日本人選手を抜いてトップに立ったケニア人ランナーを、さらに速いスピードで走るケニア人ランナーが追うという構図になった。
この留学生対決を制したのは、テレシアだった。3.2キロ地点でバイレに追いつくとすぐに引き離し、3.5キロ地点からは独走モードに入る。そのまま逃げ切って世羅が優勝し、バイレの神村学園は2位だった。テレシアのタイム、14分37秒は従来の区間記録であった15分4秒を大幅に更新する衝撃的な走りだった。
この逆転劇が残した印象は強烈だった。最終区間のケニア人2人が凄まじいペースで前を走る選手たちを次々と抜き去り、日本人選手たちが置き去りにされていった。4区まで必死に繋いできた襷が、最後の5キロで一気にひっくり返る。
ラストがケニア人2人のマッチレースになったことで、高校駅伝の優勝争いに日本人選手が不在だったように映った。2018年も含め、3年間で二度、ケニア人ランナーがアンカーで逆転して勝負を決めたことになった。


