「ケニア人には勝てない」「日本人選手がかわいそう」――全国高校駅伝で留学生ランナーが劇的な逆転劇を演じるたび、SNSではそんな声が噴出してきた。そして2023年、大会側はついに“外国人留学生は最短3キロ区間のみ”という新ルールを導入する。だが、その議論は本当に公平だったのか。なぜ留学生だけが“勝利至上主義”の象徴として批判されるのか。
第57回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した、ノンフィクションライター・泉秀一氏の著書『アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生』(文春新書)より一部を抜粋し、高校駅伝を巡る“留学生規制”の本質に迫る。(全2回の2回目/1回目から読む)
◆◆◆
「なぜ制限するのか」が不明確な実行委員会のルール変更説明
ルール変更はあくまで大会前に決まっていたことであり、2023年のトラック決着を受けて規制に動いたわけではない。それでも、2018年、2020年のレース結果は影響していると思われる。
事実、高体連はいずれも逆転優勝の翌年である2019年と2021年に各都道府県の高体連の陸上競技専門部にアンケート調査を実施している。
そのアンケートは各都道府県が賛否の1票を投じる形式で、留学生の起用を男女とも最短区間の3キロにすることに対して、区間制限への賛成が過半数を占めた。中には、不公平感について自由記述で言及するコメントも少なくなかったという。
大会の実行委員会は記者発表資料の中で、ルールの変更をこのように説明している。
「外国人留学生の参加は高校教育のグローバル化、日本選手の競技力向上は考えられるものの、外国人留学生の特性も考慮し、男女とも最短区間の3キロとした」
文中にある「外国人留学生の特性も考慮し」という部分が曖昧で、つまるところ「なぜ制限するのか」を明確に説明していない。これについて高体連の担当者に取材をしたところ、「ジュニア期のスピード育成の観点から、留学生ランナーに最短区間でスピードを発揮してもらい、日本人選手を強化する狙いがある」との回答だった。



