ファッションフォトグラファーのSさんと初めて2人でお茶をしたらおしゃべりが止まらなくなってしまった。彼女の撮るスナップにこれまでむらむらさせられっぱなしだった。

 彼女の撮る人のチョイス、その着こなしの素晴らしさを的確に言語化したテキスト、愛、肯定感が心地よい。彼女のフィルターを通すからこそ見える美しさがあって、それは彼女の知性の賜物だ。読書も同じく、著者の知性をお借りして見えなかったものが見えるというのは大げさでなく生きがいなんだと思う。ああ人生って素晴らしい~~。

 そんな彼女がむらむらした本はなんだろう? 興奮気味に三浦しをん先生の『ののはな通信』という答えが返ってきた。

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「ののとはな、2人の女性の学生時代からの手紙とメールのやりとりが綴られている。2人が人生をかけて関係性を作っていくのだけど、その関係性に私は名前をつけられない。敬愛、裏切り、独占欲、性欲、慈しみ……わかるようでいてわからなくて、混乱したの。でも最後涙が止まらなかった」

©犬山紙子

 確かにののとはなの関係を「恋人」とか「家族」とか「友達」とかそういう言葉でくくるのは到底無理だ。というか、人の関係性をそうやって括ってしまうことにそもそも無理があるんだと読み進めるうちに思った。私とSさん、私の夫、私と娘、それぞれ対外的にはわかりやすい関係性の名前があるけれど、その内情はいろんな形をしてるしいろんな要素がふくまれてる。この本は第3者の視点ではなく、彼女らの手紙として描かれているからそれがより伝わってくる。アガペーというやつ? と思ったけど、それもやっぱりしっくりこない。彼女たちの関係は「ののはな」としか言い表せないんだろう。

「泣いたのは、愛というものの大きさや多様性に触れたからなのかな。人と人との愛の大きさに圧倒された。でっかいなにか、でっかい愛情に物語を通して触れて、それにびっくりして泣いてしまったんだと思う」

 普段「愛」って言われてもそれが何かはっきり言えないし、あやふやなものだ。『ののはな通信』を読んだ直後に「愛」について思いを馳せるとその輪郭に少し触れている気がする。

 そういえば編集者のYちゃん(彼女のことも超好き)もこの本を私にオススメしてくれてたな。感想を聞いてみたら「私にとっての福音だった、誰かを大切にしたいと思った」とシンプルに強い感想を聞けた。

 Sさんと私は往復書簡を始めることにした。ここから関係性「Sいぬ」が生まれると思うとむらむらする。やっぱ人生は素晴らしい。