10日もいつもどおり午前5時に起床、6時にミサを行い、6時半には他の神父と友愛会修道院へ出かけていたそうだ。
これらベルメルシュ神父の証言は多少の食い違いはあったものの、親しい教会関係者の証言で概ね間違いないことが判明。
絵に描いたような完璧なアリバイ
さらに客観的なアリバイとして、8日14時過ぎに調布に出向く前に荻窪で、9日15時半ごろには調布から神父直筆の電報を送っており、調布から戻った20時45分過ぎには新宿西落合のガソリンスタンドで給油に訪れていたことも明らかとなった。
絵に描いたような完璧なアリバイに捜査陣はかえって不自然さを感じ、教会関係者が口裏を合わせベルメルシュ神父を庇っているのではないかと疑う。そんな矢先の4月12日、思わぬ出来事が起きる。
NHKがドキュメンタリー番組「日本の素顔」の取材で、たまたま横浜出入国管理事務所(現・東京出入国在留管理局横浜支局)で撮影していた際、捜査本部がベルメルシュ神父の出国を水際で阻止するために内々に回していた手配写真がカメラにクローズアップされ、重要参考人としての神父の顔と名前が漏れてしまったのだ。
教会は捜査機関に強く抗議
教会側はすぐにカトリック系ニュース通信『東星ニュース』で「噂されているベルギー人神父は、8日も9日も他の神父と行動を共にしていたことがわかったので、事件とは無関係である」と声明を発表し、捜査機関に強く抗議した。
警察はこの一件で態度を硬化させた教会側を説得し、弁護人とバチカン大使立ち合いの下という条件付きで5月11日から教会内で任意聴取を行う。このとき調べを担当したのが、後に吉展ちゃん誘拐事件で犯人を自供に追い込んだ警視庁捜査1課の平塚八兵衛だ。
しかし、ベルメルシュ神父は日常会話には応じるものの、話が事件に及ぶと一切の関与を否定する。