「パラパラのチャーハンがいい」というのは幻想?

 もちろん、パラパラにするためには米粒の表面の水分をある程度飛ばす必要があるため、低い温度でゆっくりと炒めると時間がかかり過ぎます。表面の水分が蒸発する頃には硬いご飯になっている可能性が高いので、短時間で米粒表面の水分を蒸発させるためにも高い温度は必要です。

 必要なのは強い火力よりも表面温度を下げないこと。そう考えるとご飯は冷やご飯ではなく温かいほうがいいので、冷やご飯を使う場合は電子レンジで温めてから炒めましょう。また、卵や具材なども冷たい状態は避けるのが無難。鍋を振るとガスコンロの火から遠くなり、温度が下がりやすいので、必要以上に振ることはありません。

 このようにチャーハン作りには様々なコツや裏技がありますが、そのほとんどがパラパラにすることを目的としています。一方、「消費者の意識調査による米飯料理のおいしさの要因分析」という論文によると、食べる人が重視しているのは「盛り付け、硬さ、ふっくら感、ツヤ」で、単にパラパラしているだけの硬いチャーハンは好まれないことがわかっています。じつはパラパラを追い求めすぎるとおいしいチャーハンにはならないのです。

ADVERTISEMENT

「なぜ、プロのチャーハンはパラパラなのか?」と疑問に思うかもしれませんが、そもそも粘り気の強い米を選ばず、ふつうに作ればパラッとしたチャーハンになりますし、揚州炒飯(書籍参照)のように仕上げにスープを加えてしっとりと仕上げるスタイルもあります。パラパラは絶対的な正義ではないのです。

パラパラチャーハンが良い、というのは幻想? ©Paylessimages/イメージマート

 歴史を振り返れば、戦後の町中華が冷やご飯をおいしく食べるために知恵を絞り、やがてメディアが「パラパラ」という理想像を形作ってきました。しかし、意識調査が示す通り、我々が求めるおいしさは、パラパラではなく、お米本来の「ふっくら感」や「ツヤ」にあります。

 パラパラは手段であって、目的ではありません。だから、強すぎる火力に翻弄される必要も、特定の裏技に固執する必要もなく、自分がおいしいと思う状態を作れればいいのです。

 チャーハンという料理の面白さは、求められる理想が人によって異なるからこそ、探求の道がどこまでも続いている点にあるのでしょう。もしも、明日、チャーハンを作るなら、まず「パラパラにしなければ」という呪縛から離れてみるのはいかがでしょうか。案外、その肩の力が抜けた瞬間に、最高のおいしさと出会えるかもしれません。

最初から記事を読む 「昭和の肉じゃが」は、こうやって作っていた…“いにしえのレシピ”から読み取る「味付けの意外なポイント」