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父から支援員に「妻を返せ」とメールが……
智美さんが中学卒業直前の状況を振り返る。
「お父さんがいない間に、と急いで部屋を片付けて、私が入る高校に通いやすい地域に引っ越したんです」
そうした事情が分からず、アスポートの支援員の田中正樹さんは、部屋の前から智美さんの母、京子さんの携帯電話に連絡した。
京子さんはすぐにやってきた。田中さんは車の中で事情を聴いた。京子さんは元夫の暴力や逮捕の事実は伝えず、「元夫から逃げるために引っ越した」とだけ説明した。詳しく話さなかったが、「逃げる」と聞いた田中さんは「DVがあったのかな」と感じた。
後に田中さんの携帯電話に父から「京子を返してください」とメールが届き、被害を確信した。返信はしなかった。
田中さんは「急に引っ越して連絡が取れなくなるケースはよくある。だから、状況を把握するため、支援の食料を置いてくるだけでも家庭訪問を続ける意味がある」と話す。
智美さんたちは近くの町に引っ越し、本来なら中学校を転校する必要があった。ただ、卒業まではもうすぐだった。京子さんが中学校側に家庭内の事情を打ち明けると、そのまま在籍できることになった。
一方で、智美さんは自分の状況を仲のいい友達も含めて、誰にも話していなかった。こうした微妙な状況にある場合、子どもへの配慮が不可欠だが、卒業して間もなく、友達と一緒に母校を訪れた智美さんはショックを受けることになった。