欲望と暴力が渦巻く歌舞伎町の一等地にたたずむ、通称「ヤクザマンション」。かつて闇金や組事務所がひしめく異様な空間に、何も知らずに幼い子供3人を連れて入居したのが元SM女王のミクさん。

 隣室から響く女の悲鳴、ポストに届く「殺す」のメッセージ――。狂気とバイオレンスに満ちた記憶を、作家・本橋信宏氏の文庫『歌舞伎町アンダーグラウンド』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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衝撃! ヤクザだらけのマンション

「あそこに住んでたんです。ちょうど女王様やってるとき」

 ミクが歌舞伎町のヤクザマンションに住んでいたころを証言する。

 今年40代半ばになるミクは実年齢より10歳以上若く見える。以前はSMの女王様だった。

 欲望に忠実に生きてきた女は、細胞も活性化するのだろう。

 歌舞伎町の名所ともいえる俗称ヤクザマンションは、大通りに面して建つ大手不動産会社の賃貸マンションである。

 新宿駅にも近く、アクセスもいいので、事務所に使用したり、歌舞伎町で働く人々の住居としても重宝されてきた。

 気づくとマンションは、ヤクザの組事務所、組員や歌舞伎町のキャバ嬢・ヘルス嬢の住居、交際クラブ事務所、闇金事務所、といった歌舞伎町を象徴する人々の建物と化した。

 なかでも強面の男たちの密集度は歌舞伎町一、いや全国一だろう。