かつて「ヤクザマンション」で、父親の異なる3人の子供を育て上げた元SM女王のミクさん。経済的困窮や裏切りを乗り越え、“癒やしの女王”となった彼女が最後に辿り着いた境地とは。
当時のリアルな記憶を、作家・本橋信宏氏『歌舞伎町アンダーグラウンド』(新潮社)より一部抜粋でお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
マンションで発砲事件
一番下の子のパパというのはさぞや強面の顔で、迫力があったのだろう。
「夜中、下の人がきたんですよ。インターホンを鳴らされて、ドアは開けなかったけど、謝りにきたんです。『ほんとにうるさくて、気が狂いそうだったから、あんなことをやってしまいました』って。顔は見てない。怖いから。若い男の人でした」
ヤクザマンションにある日、機動隊がやってきた。
マンション内に敵対関係にあるヤクザ事務所があったため、発砲事件が起きて、互いの組員が駆けつけ一触即発の事態になったのだ。機動隊が取り囲み、黒服のヤクザたちを規制する。
ミクのところに安否を気遣う電話が何本も入った。
抗争寸前で事なきを得た。
「わたしはヤクザとは絶対に付き合いたくないです。ヤクザは絶対にいやだ」
ミクは10代のときに、地元のキャバクラでアルバイトをしていた。
