「当時の女王様はみんな笑わないし、キリっとして写真に出てて、赤い口紅とかつけてるんですよ。でもわたしはナチュラルメイクで、赤い口紅はつけないし、写真撮るときも笑うし。だからナチュラル系。“わたしとM男と仲間たち”みたいなチームだった。

 M男に共通する特性って……なんだろう……依存心。支えてくれる、包んでくれる人がほしいんじゃないかなあ。だから、わたしになつくのかな。わたし、包容力そんなにないんだけど、みんななつく」

トラブルだらけのヤクザマンション

 ミクの暮らすヤクザマンションでは、時々、みずから死を選ぶ人間がいた。

ADVERTISEMENT

 夜中や明け方に、鈍い衝撃音がある。

 しばらくするとサイレンの音がして、外がざわめく。あとで通ると、血の跡があった。

 居住者が長い間、行方不明になっている部屋も複数あった。

 父が異なる3人の子どもたちをミクは一人で育ててきた。

 近くの小学校には様々な国の子どもたちが在籍していた。彼らは歌舞伎町を遊び場として十分、楽しんでいた。

 育ち盛りの子どもたちと暮らすと、洗濯物だけでも大変だ。

 洗濯機は部屋に置けないから、1階の階段をあがったところにある住人専用のコインランドリーで洗濯した。

写真はイメージ ©getty

 歌舞伎町で暮らす人々は自分たちのことに必死で、他人のことなど気にしている暇はない、とミクは感じた。