3/6ページ目
この記事を1ページ目から読む
お互い、あっ、と口から出た。
何年ぶりかで見かけるミクだった。
「あのとき、人と待ち合わせしてたんだけど、わたしが勘違いして違う喫茶店で待っていたんですよ。そしたらばったり本橋さんと」
「ということは、あなたが店を間違わなかったら、あそこで出会っていなかった」
「そうですね」
お互い、その店ははじめて入ったところだった。
時間が数分違っていても、再会は不可能だっただろう。
カネを持ち逃げされたことも
大都会では、当人同士も気づかない、すれ違いと出会いが交錯している。
あれからミクは荒波に揉まれて生きてきた。
実家の事業が傾き、ミクは寝る間も惜しんで働き、経済的に支えてきた。
体を壊し、やっと復帰したかと思ったら、付き合っていた男がミクのカネを持ち逃げして消えてしまった。
キャバクラから、もう一度SM店に移った。
私と奇跡的な再会を果たしたとき、ミクはSMの女王様として人気を博しているときだった。
彼女には常にM男たちがかしずき、SM専門誌にはミクのグラビアが毎月のように組まれた。
逆夜這いのころ、ミクは恥じらうような微笑を口元に浮かべ、女王様になると鞭を持ちながら、やはり微笑していた。
ミクは“癒しの女王様”と呼ばれた。