お互い、あっ、と口から出た。

 何年ぶりかで見かけるミクだった。

「あのとき、人と待ち合わせしてたんだけど、わたしが勘違いして違う喫茶店で待っていたんですよ。そしたらばったり本橋さんと」

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「ということは、あなたが店を間違わなかったら、あそこで出会っていなかった」

「そうですね」

 お互い、その店ははじめて入ったところだった。

 時間が数分違っていても、再会は不可能だっただろう。

カネを持ち逃げされたことも

 大都会では、当人同士も気づかない、すれ違いと出会いが交錯している。

 あれからミクは荒波に揉まれて生きてきた。

 実家の事業が傾き、ミクは寝る間も惜しんで働き、経済的に支えてきた。

 体を壊し、やっと復帰したかと思ったら、付き合っていた男がミクのカネを持ち逃げして消えてしまった。

 キャバクラから、もう一度SM店に移った。

 私と奇跡的な再会を果たしたとき、ミクはSMの女王様として人気を博しているときだった。

 彼女には常にM男たちがかしずき、SM専門誌にはミクのグラビアが毎月のように組まれた。

 逆夜這いのころ、ミクは恥じらうような微笑を口元に浮かべ、女王様になると鞭を持ちながら、やはり微笑していた。

 ミクは“癒しの女王様”と呼ばれた。