ふたりは、ネットで野球の動画を見ていたのです。

 阪神タイガースの動画のようでした。なぜ私が教室の後方からそれがわかったかと言うと、音量が大きかったからです。

 女性の校長先生は彼らに話しかけていました。

ADVERTISEMENT

「教室にいるんだったら、パソコン見ていいよ」

「でもボリュームは0から20のあいだにしなさい」

「他の人に迷惑だから」

 要は教室内にいて、騒ぎさえしなければいいということです。その子たちは、もともと暴言を吐きまくり、ときどきクラスメイトに対して手も出ていたと聞きました。

クラスの約半分が空席、子どもは騒いで暴れ出し授業を妨害

 その教室は、27人クラスでしたが、10人分の席が空いていました。欠席の子もいたのでしょうが、学校に来ている子に関しては、廊下でサッカーをしたり、運動場で遊んだりしているのです。

 教室外にいる子が、授業補助に来ている校長先生らに連れ戻されます。ひとりが戻ってくると、他の仲間の子が「どこ行ってたん?」と会話が始まり暴れ出します。群れているのです。その子たち同士での仲間意識があって、教室が悪い方向に向かう。手がつけられない状況でした。

 騒がしいなか、机に座っている子どもたちはワークシートという穴埋め問題のプリントを黙々と解いていました。

 一定の時間が過ぎると無機質なタイマー音が教室に響きます。

 教室では、校長先生と授業を受けなかったり、妨害したりする男の子たちとのやりとりが続いています。

「いま、そういうことをするときじゃないでしょ!」

 などと校長先生が叫ぶ声。また、先生の机で野球の動画を見ている子どもたちに対して、幾度も注意していました。

「それ音量100くらいでしょ? 下げなさい」

 日本では、2018年に文部科学省が教育のICT(情報通信技術)化に向けた環境整備5か年計画を策定し、子どもたちにノートパソコンやタブレットを持たせていますが、ここで目にしたのはそれがおもちゃ化した実態でした。

 パソコンの音量を下げる、下げないのやりとりがエスカレートしたとき、その子が校長先生の髪を引っ張ろうとしました。

 私は「参観者」の立場を超え、思わず子どもに声をかけました。

「君、それは……」

 するとその子はさーっと逃げていきました。

 このとき、彼が私のことを睨みつけてきたのですが、その表情はとても小学校2年生とは思えないものでした。パッと見て肌の色から、ご両親のいずれかが外国の方のようにも見えました。いまの学校では当たり前のことです。多様な子どもたちが学び合う場こそが、公立小学校ですから。