その授業は終了のチャイムが鳴ったあと、5分間延びました。子どもたちはもう、チャイムが鳴る前にボールを持って運動場に出ようとします。そして先生に「5分延びたのだから、休み時間も5分延ばして」と要求していました。

 一方、この野球帽の男の子たちに対して学校側がやっている対応は、放課後に「たとえ6時間外に出ていても、その日の簡単なプリントの問題を解けばいい」というものでした。彼らは10分で問題を解き終えることもあったようです。算数の引き算の時間に外に出たのなら、その分だけ「ひとり課外」が実行されているといいます。これは、根本的なものごとの解決にはつながらない、対症療法のように見えました。

廊下で見守っていたおばあちゃん

 廊下には杖をついたおばあちゃんの姿がありました。何をしているのか。孫娘が教室で怪我をするかもしれないから、見守りに来ていると言うのです。なかには弁当まで持って一日中教室を見張っているという保護者もいるそうです。

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 横の教室は1年生が使っていました。廊下にはついたてがあり、こう記されています。「ここから先は2年生のゾーン」。つまり、危険だからトラブルを避けるために入れないようにしているのです。

 一方、トイレの出入り口は「常に開けておくこと」になっています。なぜならそこで子どもたちがたむろして、突発的な事故が起きる可能性が高いとの判断からでした。個室はもちろん開けっ放しとはいきませんが、少なくともトイレの様子は廊下からもわかるようにしておく、ということでした。

 次の時間、私はその教室で飛び込み授業をやりました。まず、最初に発した言葉はこれでした。

「チョーク貸してください」

 黒板の下のチョーク入れに置いてなかったのです。子どもたちが先生に向けて投げる凶器になるからです。黒板消しもありません。同じ理由です。先生が自分で持っておくようになっているというのです。

写真はイメージ ©takasu/イメージマート

1ヵ月で教師の心を折った2年生の暴言

 そんな教室の光景は、最初は「今風の学級崩壊」にも見えましたが、じっくり眺めていくと「昔風の崩壊」でした。一見、「対 先生」という軸がなく、ただ好き勝手にやりたい子どもが暴れている「今風」と思われましたが、じつはベクトルは先生に向けられていました。先生が子どもたちから追い詰められているのを私が知ったのは訪問する直前でした。もともとは先生がターゲットになっていたのです。

 この学校への訪問は、以前から知っていた男性の先生に招いていただいてのことでした。その年の3月末、依頼の主旨はこういった内容でした。