集落に戻った家は7軒だけ

 「それほど魅力的な花なら、原発事故で疲弊した村に人を呼べないか」。村役場は2025年度から5年計画の観光戦略プランを策定し、クリムゾンクローバーを重要なコンテンツと位置づけた。観光推進協議会に部会を設け、松本さんも参加している。同年から畑のマップ作りを開始し、2026年にはフェスティバルを行った。担当職員の杉本誠さんは「商品開発にも取り組みたい」と意気込む。

フェスティバルの期間中、撮影用にソファが置かれたクリムゾンクローバー畑(葛尾村役場撮影)

 松本さんはフェスティバルに合わせて、切り花を試作販売した。好評だった。孫のために揚げたいと願いながらも避難後はしまったままになっていた鯉のぼりもフェスティバルに合わせて揚げた。「息子が生まれた約40年前に妻の父がくれたものです。ようやく揚げられました」と青い空を見上げた。

原発事故による避難後、松本哲山さんは鯉のぼりを一度も揚げていなかった。「クリムゾンクローバーフェスティバル」に合わせ、「孫のために」と初めて揚げた(葛尾村)

 避難前、葛尾村の人口は1482人だった。あれから15年が経過して1194人に減った(2026年5月1日時点)。今なお村外避難が多く、帰還者は移住者を含めて470人しかいない。松本さんの集落は23軒あったが、住んでいるのは7軒だけだ。

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白と赤のコントラスト(葛尾村)

 人を呼び寄せる不思議な力を持つクリムゾンクローバー。花言葉は「胸に火を灯す」「素朴な愛らしさ」だ。470人で1000人もの客を受け入れる態勢づくりなど、村の活力に結びつけるにはまだ多くの課題があるものの、原発事故で傷ついた山村に小さな灯が生まれつつある。

写真=葉上太郎

※花期は5月中に終わっています。

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