真っ先に思い出すのが小学校時代の「大雨事件」

「クラウディアさんとの思い出を教えてください」

 芸能一家である梅宮家は何かとメディアに取り上げられることも多い。“母と娘”をテーマに取材を受けると、必ずこんなことを聞かれる。

 そのたびに私は困ってしまう。

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 真っ先に思い出すのが小学校時代の「大雨事件」だからだ。

 あれは私が小学校の低学年だったころ。前にも書いたけど、梅宮家は松濤の豪邸を売り払って、借金を抱えながら、参宮橋の狭いアパートに移り住んでいた。「カン、カン、カン」という足音が鳴り響く螺旋階段が記憶に残るあの家だ。

 当時、通っていた川村小学校からの帰り道。私は、学校近くの目白駅から山手線に乗って新宿駅で小田急線に乗り換え、参宮橋駅で降りる。それがいつものコースだった。

 でも、その日は参宮橋駅を出ると、ありえないほどの土砂降り。学校を出るときはまるで降っていなかったのに。

 家まで歩いて10分はかかる。どうしよう。

 周りを見渡すと、駅で待っていた同じ年ごろの小学生たちが、母親に迎えに来てもらっている。赤や黄、青、色とりどりの傘をさして、みんなが家路につく。いいなあ……。気が付くと、私のように駅で待ちぼうけする子どもはほとんどいなくなっていた。

「おい、アンナ。なんかあったら、これでうちに電話するんだぞ」

 パパにそう言われて、10円玉を2枚渡されていたことを思い出した。たしか、今日はママが家にいるはず。私も迎えに来てもらおう!

 駅構内の公衆電話に10円玉を押し込んで、ダイヤルを回す。

「はーい、梅宮です」

 ママの朗らかな声が聞こえてきた。

「あのね、ママ。いま参宮橋の駅なんだけど、雨がすごいの。迎えに来てくれない?」

 次の瞬間、ママから返ってきた言葉は今も忘れられない。

 

「やーよ。濡れてもいいから、そのまま帰ってきなさい」

 えっ? なんでそうなるの? みんな迎えに来てもらっているのに。

 しばらく理解できなかった。ぐっと涙をこらえる。

 仕方ないから、大雨が降る中、家までの帰り道をトボトボと歩いた。大粒の雨が私の体に打ちつける。あっという間にランドセルも、制服も、革靴も、ビショ濡れになった。

「やーよ」

 電話でママが放った言葉がふいに頭の中で蘇る。その瞬間、とめどもなく涙が溢れてきた。やっとのことで家に着くと、ママはリビングでソファに座って、のん気にテレビを見ていた。

 今振り返っても、「さすがに泣くでしょ」と思える出来事だ。

写真=平松市聖/文藝春秋

 梅宮さんの著書『フルコース』では、母・クラウディアさんと父・辰夫さんの衝撃の馴れ初めや、娘・百々果さんとのローションを掛け合うほどの大喧嘩、10日で再婚した夫との関係など、赤裸々に書かれています。

フルコース がんと私と家族の日々

梅宮 アンナ

文藝春秋

2026年6月10日 発売

次の記事に続く 「ご飯といえばコーンフレーク」「誰もいない家でカップ麵を…」梅宮アンナが告白する、母・クラウディアとの“孤独な鍵っ子時代”

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