“一蹴”された旧皇族復帰案
このままでは皇統の危機に陥る――。その事実が政府に突き付けられたのは、2016年、上皇の「退位のご意向」が契機だった。
上皇が退位すれば、天皇家は一世代若返る。だが、その次の世代には、男子は悠仁さましかおられない。その事実は、なかなか重い腰を上げなかった政府をようやく動かした。17年、生前退位を可能にする皇室典範特例法が成立。この特例法の附帯決議に、政府が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」検討することが盛り込まれた。
安定的な皇位継承。これは、上皇が最も呻吟なさってきた課題だ。上皇の相談相手を務める人物は、本誌記者にこう語ったことがある。
「悠仁さまはもちろん天皇になられるが、“愛子天皇”の制度上の可能性をなんらかの形で残しておかなければ、今後の皇室の存続は難しいのではないか」
そして、こんな懸念も口にした。
「旧皇族の復帰を実現してしまったら、象徴天皇制はなくなってしまう」
旧皇族の復帰は、養子案という形で、まさに現在議論されている検討課題の一つだ。なぜ上皇周辺は否定的だったのか。
旧皇族とは、戦後まもない1947年に皇籍を離脱した11宮家に連なる人々のことだ。そのうちの賀陽(かや)家、久邇(くに)家、東久邇家、竹田家の4家に、30代以下の未婚の男系男子が少なくとも11名いるとされ、彼らが皇籍復帰の候補とみられている。現行の皇室典範では皇族が養子をとることは認められていないが、典範改正で旧皇族の男子が宮家の養子に入り、その養子の子が男子であれば、その子も「男系男子」となる。その男子に皇位継承権を認めれば、男系での皇統の維持が可能になる。そのため、男系維持派の保守派の言論人らはこれまで、旧皇族の養子案を強く主張してきた。
一方、平成時代に上皇が築いてこられた象徴天皇像は、“生身の人間”である天皇が、国民に寄り添い、祈り、常に国民と共にある自覚を持ち続けることで、国民からの理解を得て成り立ってきた。その点、旧皇族の人々が、「皇統に連なる男系男子」という理由だけで皇室に復帰したとき、果たして国民の敬愛を受けることができるのか。上皇の相談相手の口調には、そんな懸念が滲んでいた。
※本記事の全文(8500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年7月号に掲載されています(本誌編集部「深層レポート 天皇が漏らされた“ご懸念”」)。全文では、以下の内容も読むことができます。
・最初から養子案採用を模索
・彬子さまと佳子さまの「意向の違い」
・旧皇族の男系男子との結婚話


