――澤さんは以前から「試合に負け、誰かが自分のミスと言っているようではダメ。一人のミスはみんなのミス」と仰っていました。あの時のなでしこは、誰がミスしたのか誰が活躍したのか分からないほどチームが溶け合っていました。

 一人のためにみんなが、みんなのために一人が、という関係性でしたね。究極的な言い方をすれば選手全員が完ぺきにできていたら、絶対に負けることはないんですよ。でも、人間だからそんなことはあり得ない。だったら自分の足りないところをみんなに助けてもらえばいいし、得意な部分は伸ばして誰かのために生かす。

 ミスを責めても何も生まれないし、足りない部分をどうやって埋めていくかを考えた方がチームは回るんですよね。

ADVERTISEMENT

――どうやったら全員がそんな思考になるんですか?

 選手同士で普段から密にコミュニケーションを取ることですね。私たちは普段の練習後にも毎日ミーティングをやっていたし、試合後も同様。失点した原因や次回への改善点を話し合っていましたね。そういう日々の積み重ねで、チームの意識統一ができたんだと思います。

 W杯前ぐらいになると、それぞれ言葉がなくてもお互いに今どんな状態か、察することができるようになっていましたね。

2011年、ドイツW杯で優勝したなでしこジャパン。キャプテン・澤さんは、大会を通じ計5得点を決めて得点王、大会MVPに選出。決勝のアメリカ戦では劇的な同点ゴールを決めた ©時事通信社

「私より上手い選手はいっぱいいました」

――6度のW杯出場と4度の五輪経験という圧倒的なキャリアがあるのに、若い選手たちにイジられることもありましたよね。

 ありましたね(笑)。年齢やポジションに関係なく一人一人と向き合い、リスペクトしていましたから。それに、私より上手い選手はいっぱいいましたし。

――えっ、バロンドール賞を受賞した人なのに?

 私には一番が何もないんです。私はサッカーの基本であるドリブルやキック、リフティング、あるいはジャンプ力、走る距離、ウエイトの数値……。チームメイトに比べて、どれも秀でたものはありませんでした。全部アベレージ。

 だから、もっと上手くなりたいと練習を重ねスキルを磨き続けられたし、自分がどうなるかということよりも、チームとして一番になりたいと考えるようになりました。目指したのは、お互いの良さを引き出し、足りないものは補い合うチーム作り。それが、ドイツW杯やロンドン五輪で花開いた。