制約を「美学」へ変えた3人の先駆者――高畑・長浜・出崎
これに対して、現場のクリエイターたちは指をくわえて見ていたわけではなかった。谷口氏は、第3段階「制約の中での表現」として、独自の表現を確立した3人の演出家、高畑勲、長浜忠夫、出崎統の名を挙げた。
「まず、高畑さんは演出家がこれはどういう話なのか、何を伝えたいのかをまず考えて、それによって各セクションに対して演出的な理由を持って、全て説明していかなければならないという、考えを大きく導入します。それまでアニメーションは、作画の人たちが、なんとなく集まって話をして、よしこれは誰々君が得意だから、やりたそうだからお願いしちゃおうとか、そこまで強い意図を持たずに決めていった感じだったんですよ。高畑さんは優先順位を明確にし、演出の意図をはっきり現場に通したわけです。
そして長浜さんは、『動かせないなら、その代わりにドラマを持ち込もう』としました。ドラマによって、人の感情のぶつかり合いなどを強く表現すれば、絵が動かせない代わりになるのではないのかと。ちなみに長浜さんという人は日本で初めて、『巨人の星』など原作ものと『ボルテスⅤ』などオリジナル作品の両方で、大ヒットさせた人です。残念なことに若くして48歳で亡くなられてしまいました。
動かない画面を逆手に取ったのが出崎さんです。出崎さんは、逆に動かせないなら、止めてしまうことによって見せようとした。人の感情の一番大事な瞬間を止めてしまうことによって、その時間を引き延ばす。それを美学にまで高めたんです。
この3人に共通しているのは、作画に頼らずに、情報の設計で物語を成立させるという考え方です。これによって、アニメーションは『日本のアニメ』になったんだというふうに私は考えています」