1980年代の黄金期と「ポストモダン」の到来

 1970年代後半、『宇宙戦艦ヤマト』のヒットやコミックマーケット(コミケ)の誕生によって、ファンという存在が可視化された。声優ブームなども起こり、アニメ雑誌も創刊された。こうした状況を背景に、多くのトライ&エラーが行われ、作品内容の記号化やお約束の蓄積が進む。同時にアニメ業界の形も整い、若年層がアニメに慣れ親しんでいく。これを谷口氏は日本アニメの第4段階「多様化と試行錯誤」の時代とした。

 そして1980年代、日本は「豊かになりすぎた時代」へと突入する。第5段階「アニメ表現の成熟」期である。アニメ制作がフォーマット化されていく一方で、劇場映画、海外との合作やOVAなどテレビ番組以外の場所で実験的表現を模索する動きが活発になる。国家や革命といった「大きな物語」が失われ、人々が自分探しを始めたこの「ポストモダン」の時代の象徴となったのが、押井守監督らが手掛けた『うる星やつら』であった。

「この時代になると、直球の感動などは、全てお笑いになってしまう。では何が面白いのかを考えたときに、すでにあるものの面白いところを引っこ抜こうじゃないか、という考えが生まれてきます。つまり、パロディとか引用とかコラージュです。『うる星やつら』という作品は近年も新作が放送されていましたが、ポストモダンのど真ん中を走っている作品です。本来なら、ポストモダンの文脈の中で見ないと、『うる星やつら』の本質的な面白さは理解できないのではないかと思います」

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バブル崩壊と「キャラクターの細分化」――スナック化するアニメ

 第6段階は「バランス型から、収益重視型への移行」期だ。1990年代、バブルが崩壊すると、社会を支えていた「頑張れば必ず成功する」というストーリーは瓦解した。人々は、自分を形成するための「小さな物語」を求めるようになり、物語の構造やキャラクターは急激に細分化・記号化されていく。ツンデレや猫耳といった「属性」の誕生である。特に2000年代以降、「美少女」から「萌え」と、キャラクターの属性は顕著に変化した。