伊藤匠叡王に斎藤慎太郎八段が挑戦する第11期叡王戦五番勝負(主催:不二家、特別協賛:ひふみ )の第5局が、5月31日に千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で行われた。

 昨年、斎藤は同じく叡王戦五番勝負で伊藤に挑戦し、フルセットの末に敗れている。しかし今期も本戦トーナメントを勝ち上がり、挑戦者決定戦では永瀬拓矢九段を破り、再びタイトル戦の舞台に戻ってきた。(全2回の1回目/つづきを読む

伊藤匠叡王(左)に斎藤慎太郎八段が挑んだ(写真提供:日本将棋連盟)

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「名局賞の筆頭」を経てフルセットに

 今シリーズの開幕局は、4月3日にシンガポールで行われた。振り駒で先手となった伊藤が相掛かりに誘導し、序盤早々から飛車角を交換して打ち合う乱戦に。難解なねじり合いだったが、自玉の不詰みを読み切った正確な寄せで伊藤が先勝した。

 第2局は4月18日に石川県で行われ、先手の斎藤が矢倉にし、伊藤は中住まいに構える。終盤で伊藤が冴えた指し回しを見せ、連勝スタートを決めた。

 このままストレートで決着かと思いきや、ここから斎藤が猛烈な盛り返しを見せる。5月3日に愛知県で行われた第3局、後手の斎藤が雁木模様から意表の四間飛車を敢行。終盤の競り合いを制して1勝を返す。

斎藤慎太郎八段(写真提供:日本将棋連盟)

 そして、大阪府で行われた第4局。先手の斎藤は相掛かりに誘導したのだが、その終盤戦は凄まじいものだった。双方が秒読みの中、玉と玉が接近するギリギリの寄せ合いに。妙手に妙手で返し、斎藤が絶妙の手順で逆王手の罠をくぐり抜ける。

 その攻防の凄まじさは、渡辺明九段がX(旧Twitter)で「叡王戦第4局。現時点では名局賞の筆頭ですかね。まだ5月ですけど」とつぶやくほど。素晴らしい内容で斎藤がフルセットに持ち込んだ。

タイトル奪取の流れか、と思いきや…

 ここまでは2連勝からの2連敗という、一見すると叡王にとっては悪い流れ。だが、この間も伊藤の充実ぶりは際立っていた。

 並行して行われていた王位戦では、挑戦者決定リーグ戦の最終一斉対局を前にして、最終戦とプレーオフでの全勝が絶対条件という厳しい状況の中、藤本渚七段に連勝し、古賀悠聖六段にも勝利。そして挑戦者決定戦では羽生善治九段を破って4連勝を飾り、王位戦の挑戦権を勝ち取った。

伊藤匠叡王(写真提供:日本将棋連盟)

 特に羽生戦もまた「名局賞候補」と呼ばれるほどの内容で、大詰めに伊藤が放った「3手1組の角のただ捨て」は、将棋の歴史に残る妙手順であった。

 そして、柏にやってきた叡王戦第5局。私も大盤解説会や関連イベントの打ち合わせがあり、前日から柏入りしていたので、写真撮影の合間に両対局者と話をする機会があった。