人気棋士が勢ぞろいした大盤解説会

 午後2時からは大盤解説会がスタートした。叡王戦における柏対局の歴史は2022年の第7期に始まり、4年連続で対局の舞台に選ばれている。「叡王戦は柏」という印象が定着したのは、同市に将棋センターを構えて拠点とする我が師匠・石田和九段の功績も大きい。

 現在は師匠が闘病中ということもあり、一門の棋士と、師匠が率いる日本将棋連盟東葛支部、さらには千葉県連の方々までが総出で準備に奔走した。

筆者はパソコン操作を担当

 この日の解説陣は、佐々木勇気八段、高見泰地七段、三枚堂達也七段が務め、聞き手は鎌田美礼女流2級。また門倉啓太六段は、午前中にS席参加者への特別解説を行い、午後には青空将棋を担当した。渡辺大夢六段と加藤結李愛女流二段以外の石田門下が勢揃いした形だ(※三枚堂は内藤國雄九段門下だが、石田の将棋道場で育った)。さらには立会人の森内俊之九段や、常務理事として同行している瀬川晶司六段もゲスト解説として登壇した。

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 闘病中の師匠・石田だが、「どうしても解説会場を見たい」と、看護師さんの付き添いでベッドに横たわったまま現地へ駆けつけてくれた。佐々木はずっと師匠に話しかけていた。

佐々木勇気八段

 解説会の開始時に壇上で私が紹介し、師匠が舞台袖に姿を見せると、会場からは大きな拍手が湧き起こった。みなさん、心配してくださっていたのだ。師匠は1947年生まれの79歳。再来年には81歳の「盤寿(将棋盤にあるマス目の数になぞらえたもの)」のお祝いを、ここで盛大に行わなくてはならない。

金銀がばらける大胆な指し回し

 さて、大盤解説が始まってすぐ、将棋は予想もしない展開となった。伊藤叡王が居玉のまま、大胆な指し回しを見せたからだ。

 銀が5段目まで進出し、右の金も玉から離れて三段目に上昇していく。さらに左の銀も6段目に上がり、金は8八の僻地へ。おいおい、玉の回りに守り駒がいないぞ。

 これには佐々木も三枚堂も驚きを隠せない。佐々木が「形勢はともかく、先手はまとめにくいよね」と言えば、三枚堂も「良い子はちゃんと玉を囲わないとダメですね」と相槌を打つ。

三枚堂達也七段

 だが、ここからの伊藤の指し回しが絶品だった。

 8筋の歩を伸ばしてわざと飛車に取らせると、金を前進させて圧力をかける。ついに自陣の八段目・九段目から金銀が消えた。「玉のガードマン? そんなものはいらないよ」とばかりの大胆不敵さである。狙いは、後手の桂頭だった。