大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれた、源頼朝の愛妾・亀の前の屋敷破壊事件。犯人は、頼朝の正室・北条政子だった。妻の妊娠中に浮気を繰り返す夫への怒りから、一族を巻き込んで前代未聞の暴挙に及んだ「日本最凶の恐妻」の若き日の素顔とは?ライターの小林明氏の新刊『毒婦の日本史』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

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妻・政子の妊娠中に浮気を繰り返した頼朝

「ここまでするかぁ!?」

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 破壊されて梁や柱が剥き出しとなった家屋を見て、俳優の大泉洋が扮する源頼朝は叫んだ。令和4年(2022)NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のワンシーンだ。

 家屋は、頼朝が愛妾・亀の前を住まわせていた右筆・伏見広綱の屋敷だった。右筆とは、武家が出す公文書を代筆する文官のことである。書状の執筆を任せるほどだから、頼朝が信頼を置く秘書ともいえる存在だった。その家に妾を匿っていた。

 一方、屋敷の粉砕を命じたのは頼朝の正室・北条政子。

 寿永元年(1182)11月10日の夜のことだった。

 政子に命じられた実行役は牧宗親。政子の父・北条時政の後妻・牧の方の父(あるいは兄弟)だったといわれる男である。政子に亀の前の存在と、居場所を教えたのも牧の方だった。要するに北条家の面々が結託し、娘の婿である頼朝の愛人宅を、徹底的に破壊したのである。

 これが一般に「亀の前事件」として知られる出来事だ。鎌倉幕府の公式史書『吾妻鏡』にも、記録として残されている。

 正室の政子が、妾の亀の前を襲う──それほど怒りが凄まじかったのである。