幼少期を思い出し泣き崩れ…マイケルの深い心の傷

 それでも、マイケルが欲しかったのは「天才監督」ではなくパパからの愛だった。とくに、幼いころ、実の父親から「歌わないなら追い出してやる」と脅され、使い捨てのように扱われた傷は根深かった。

 独立したあとも、虐待被害の影響に悩まされた。マイケルが鼻を美容整形していったことは有名だが、そのコンプレックスも、ジョーから「でか鼻」と馬鹿にされつづけていたトラウマからはじまっている。外で大人から怒られる子どもを見かけると、幼少期の体験を思い出して泣き崩れてしまうこともあったという。

マイケル・ジャクソン(1983年) ©getty
マイケルの甥であるジャファー・ジャクソンが演じた、映画『Michael/マイケル』のマイケル・ジャクソン 『Michael/マイケル』予告編より

 1980年代、ソロアルバム『スリラー』が史上最高の売上を記録した20代のころも、1人でよく泣き、道端ですれ違った人に「友だちになってくれませんか」と頼むことすらあった。音楽漬けのなか早くに有名になってしまったため、友情の深め方をよくわかっていなかったし、対等な立場で知り合える同年代すら限られていた。

ADVERTISEMENT

 クイーンのフレディ・マーキュリーのような音楽スターと交友する機会もあったが、家にこもりがちだったため、パーティー好きのロックスターのライフスタイルとは合わなかったようだ。

 マイケルが心を通わせられたのは、偏見なく接してくれる動物と子ども、そしてキッズスターのつらさを知っているエリザベス・テイラーやマコーレー・カルキンのような芸能人だった。

 1984年のCM撮影事故で大火傷を負ったマイケルが健康状態を悪化させていった一方、ジョーのほうは温和になっていったと伝えられている。それでもマイケルからすれば、父親と一緒にいるものなら恐怖がこみあげて吐き気をもよおし、倒れることすらあった。

 父のほうは、息子がなぜ自分をそこまで怖がるのかすらわかっていなかったとも言われている。メディアに虐待被害を話したマイケルに対して「被害者ぶりながらたんまり稼いでるくせに」といった嫌味を返したこともあった。